Pet illness動物の病気
急性腎不全
>>>ウサギの急性腎不全について
急性腎不全は短時間で腎臓の機能が失われてしまい、尿の生成ができなくなる緊急疾患です。長い時間をかけて悪化し、安定的な経過を目指す慢性腎不全(下リンクを参照)とはその原因、対処方法が大きく異なる緊急疾患のひとつです。
急性腎不全は尿路結石などによる急性の尿路閉塞や交通事故などによる外傷性ショックをはじめとするさまざまなショック(この場合のショックとは精神的なものではなく体の恒常性の仕組みが壊れることをいいます。)、血圧低下を起こすような心不全や熱中症、敗血症、毒物などのあらゆる傷病的な緊急事態がその引き金となります。
特にウサギでは強い「ストレス」や「恐怖」によって体内に過剰に放出されたアドレナリンが腎血流量や糸球体濾過率を著しく減少させる結果として、腎臓への血行が失われてしまい尿をつくりだす仕組みが停止して腎不全が引き起こされてしまうという「特徴」がみられます。つまり、病的でない強いストレスや恐怖が命に関わる可能性があるということです。
>>>急性腎不全の症状は?
食欲低下、「抑うつ」や嗜眠(しみん、何らかの刺激がなければ寝たような状態になること)、苦悶状態を示す「歯ぎしり」などがみられることもあります。尿量は減少し乏尿から無尿となり緊急化します。
>>>急性腎不全の診断は?
飼い主さんからの訴えに急性腎不全を起こす可能性のある腎毒性を持つ薬物の投薬歴があったり、尿石症の病歴があるなどの急性腎不全を疑わせるような情報があれば疑いを持つことができますが、急性腎不全の多くは緊急化しており、救急治療の一環として行われた血液検査や画像検査で診断されることがほとんどです。
血液検査ではBUN(尿素窒素)やクレアチニンのどちらかか、いずれも著しい高値がみられることにより診断されます。同時にカルシウム、カリウム値の上昇を起こしていることもしばしばみられます。
急性腎不全の原因が尿路閉塞であればレントゲン検査や超音波検査によって、尿管や尿道に閉塞している尿路結石が明らかになります。
>>>急性腎不全の治療は?
積極的な静脈内への輸液を実施して原因となっている脱水や血液循環に生じているショック状態や低血圧などをできるだけ早く回復させて尿量の回復を目指します。
尿路閉塞をはじめとして、急性腎不全の原因となっているさまざまな傷病的な原因が取り去られ、腎臓の機能停止が一時的なものであったり、尿をつくる基となる糸球体構造が破壊から免れて充分に保たれていれば、その後の回復が期待できます。
しかしながら、腎不全に至る原因を除去できなかったり、積極的な輸液を行っても尿量回復が見られない場合や腎不全による尿毒症から回復できないケースでは死亡率も高まります。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
ツメダニ症(ウサギ)
>>>ウサギのツメダニ症について
ウサギツメダニ(Cheyletiella parasitovorax)の寄生によって生じます。このダニはウサギの表皮の角質層に寄生します。ウサギ同士の接触によって感染をしていきます。ウサギツメダニはウサギだけではなく、感染動物と接触する可能性のある人間にも感染して皮膚の発赤や掻痒(そうよう:痒み)を起こすことがあるため、人獣共通感染症として注意が必要です。
>>>ウサギのツメダニ症の症状は?
ウサギツメダニは健康なウサギではグルーミングによりある程度除去されるために症状がないか、軽いフケ程度のことが多くみられます。しかし、加齢による不活発化や肥満よるグルーミング不可範囲の拡大、歯科疾患による口の動きの制限などをはじめとする、何らかの理由でグルーミングの頻度が落ちた場合に発症しやすくなってきます。
ウサギツメダニの寄生がよくみられ、皮膚症状が多いのが肩甲骨に挟まれた頸背部です。余談ですがこの頸背部はもともとグルーミングの難しいエリアですから、ノミやダニのスポット剤の滴下部位として最適な場所でもあります。
症状が出ている場合には落屑(フケ)に加えて脱毛、皮膚の発赤、痂疲(カサブタ)を伴うさまざまな程度の掻痒(痒み)です。
>>>ウサギのツメダニ症の診断は?
ツメダニ症のウサギには落屑(フケ)が特徴的にみられます。このフケを採取して顕微鏡で観察して、ツメダニが見つかれば診断となります。下はウサギツメダニ症の頸背部の特徴的な皮膚病変の写真です。
>>>ウサギのツメダニ症の治療は?
ツメダニの駆虫にはセラメクチンの滴下剤やイベルメクチンの経口投与、皮下注射などを用いて複数回にわたる治療をいたします。補助的に病変部位を中心にシャンプーによる薬浴を行って痂疲(カサブタ)の除去などを行うことも症状の軽減のために効果的かもしれません。痒みが非常に強い場合には副腎皮質ステロイド剤を短期間使用する場合もあります。
同居のウサギがいればツメダニ症の治療中には接触を避けて生活します。セラメクチン滴下剤は投与も簡単ですから、同居のウサギにも感染の疑いがある場合には予防的なダニの駆虫を実施したほうが良いでしょう。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
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駐輪場9台併設
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