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待合室リニューアル
現在、待合室のリニューアル工事を行っています。
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あいむ動物病院西船橋は開院から、あと一ヶ月少々の令和元年8月で11年半になります。
当院は一か月あたり、延べ10000頭を超える動物達と数多くの飼い主様のご利用があります。私たちはこの待合室を通して、この十年あまりの期間、待合室に集う動物達のたくさんの悲喜こもごものドラマを見守ってまいりました。
よく"10年ひと昔"、という言葉で人生を感慨深く語る場面がありますが、この”たとえ”は、店舗などの内装の変化にもよくあてはまるかもしれません。だいたい10年目あたりを境に壁紙やボードなどの傷みが徐々に、あちこちで目につくようになってきました。
なにやら年とともに増えてくる皴とかシミのようなものかもしれませんが、内装の傷みは壁紙のスレや変色、壁紙やボードが浮いてきて剥がれたり、木枠のペンキが色褪せたりと同時多発的にゆっくりではありますが確実に進行します。まるでそこに寄り添う人間の写し鏡のようでもあります。
余談ですが、税務署が目を光らせる”減価償却”は、その”耐用年数”によるのですが、例えば新車は6年、パソコンは4年というように設備ごとに細かい規定があり、”内装”はちょっと長く、だいたい10~年と決まっています。
事業者はお金を使い経費をつくって税金を減らそうと苦労するものですが、国はそうはさせまいと耐用年数を設定して、特に高額なモノには長期にわたって経費にさせます。今回、こうしたやり口の合理的で巧妙なことに、改めて感心しました。(皮肉)
造ってから10年、こんなにも傷んだ内装がまだ全部経費になっていなかったということも含めて。。。(笑)
少々脱線してしまいました。。。
今回の内装工事は待合室の壁面の工事です。傷んだボードや壁紙を補修、交換してリニューアルする作業です。
動物病院の内装の特徴は一般の店舗とやや異なり、より一層の防汚性や耐久性への配慮が必要です。こうした対策の一例ですが、動物病院の内装をよく見てみると床面が壁に対して立ち上げる方法がとられているのことに気づくはずです。これは尿などの液体を内装に侵入させないための対策です。
つまり、日々の清掃のやり易さに加えて、長い期間にわたってオシッコやウンチなどの腐食性を持つ水分に耐え抜き、鋭い爪でガリガリと引っ掻かれ続けるような破壊行為に対する強さを兼ね備えてなければいけません。。。
今回の工事は耐久性に加えて、飼い主様の滞在する空間をより美しく快適にということを目標に、よく使用される壁紙の使用をできるだけ減らしつつ、ホテルやオフィスのエントランス、玄関ドアなど屋外使用での耐久性と、リアルな質感を持つ装飾シートを使用してみました。
令和元年7月中には待合室工事が終わる予定ですので、新しくなった待合室をご覧いただけるのではないかと思います。
ご意見、お気づきの点があればおっしゃっていただければ幸いです。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
11周年を迎えました
毛取りスポンジ?
デジタルレントゲン
皆様はレントゲン検査の"デジタル化"と聞いて何を想像しますか?
最近は人間の病院ではお医者さんがパソコン画面ばっかり見てるなーとか、レントゲンフィルムをかざしながら。。。というようなドラマの演出の”舞台装置”として見なくなった、などなど、実はデジタル化の影響というのはそんなところに端的に表れているのかもしれません。
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デジタル化以前のレントゲン検査は、扱いの面倒な大きなレントゲンフィルムにレントゲン写真を現像して、シャウカステン(レントゲンフィルムを引っ掛けて裏から光を当てて透過光で観察する専用の装置)にセットするまでの過程に、それに関わる作業の非効率が数多く介在しておりました。
”レントゲン検査”のデジタル化は、身近な”写真”のデジタル化の流れと重ねると分かりやすい現象です。
つまり、デジタルカメラの急速な普及で写真を現像するという一連の作業そのものがなくなってしまい、誰もがそれをデジタルデータとして手軽に持ち運べるようになったとこと。さらに、パソコンなりスマホなど、どの端末でも手軽に確認できるのが当たり前になったということ。
こうしたことと同じようなことが医療用のレントゲン写真でも起きているのです。
こうしたデジタル化の流れは医療の世界で100年を超えるレントゲンの歴史のわずか10年くらいの短期間でレントゲン検査の仕組みを大きく変化させました。
この変化はレントゲン写真の画質を飛躍的に向上させたということに留まらず、レントゲン写真を撮影、処理、管理して、それを患者さんに説明する過程での非効率な仕組みを取り巻く、コトやモノの環境を大きく変えるに至っています。
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レントゲン写真を撮影するための装置というのは大まかに分けて「X線を照射する装置」とそれを受けとる「X線を画像化する装置」の2つの仕組みから構成されています。
後者のX線を画像化する「X線検出器」とそれを制御してレントゲンの画像処理やその保管を担う端末を組み合わせてシステム化されていますが、この部分にデジタル化の波が押し寄せているのです。
下記の当院の過去ブログ「新しいレントゲン設備」では、X線(エックス線)の発見やレントゲン写真の原理やその歴史、その発展の流れをX線を出す方の機器、「レントゲン照射装置」とは何か?という視点から解説しています。
ご興味のある方はぜひどうぞ。。。
ところで、レントゲン照射装置とはレントゲン写真を撮影する際の”光源”となる、光の一種のX線を発生する機械のことです。
この装置が野球に例えると”ピッチャー”としての役割を果たす一方で、その照射された光(X線)を受け止めデジタルデータに変換してレントゲン画像の元をつくる、”キャッチャー”としての役割を持つのがX線検出器です。
今回はこの「X線検出器」のお話をしたいと思います。
レントゲンフィルムは”キャッチャー”としての不動の地位をレントゲン博士の大発見から100年以上にもわたる長い間築いてきましたが、わずか10年程度の短期間でその座を奪われてしまうくらいの勢いでX線検出器が普及してきました。
この変化は、仮定の話に例えるとわずか10年くらいにガソリンエンジンの車が一気に時代遅れのものとなり、電気自動車に置き代わってしまうというインパクトに匹敵するものと言えるでしょう。
つまり、このX線検出器こそが医療を皮切りに、それからやや遅れて獣医療でも起きている画像検査のデジタル化をけん引している立役者なのです。
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ところで、ここでちょっと脱線しますが、デジタル化以前のレントゲンフィルムによるレントゲン検査はどんなものだったのでしょうか?。。。
15年以上前の話になりますが、話題となり始めた初期のデジタルレントゲンシステムは多くの動物病院にとってはまだ高嶺の花でした。欲しいけれどなかなか手が出ない、イソップ童話の”酸っぱい葡萄”の話を地で行くような感じと言えばいいでしょうか。
曰く、レントゲンフィルムの画質には当分かなわないだろうというアナログへの懐古的な意見がまだ多く、アナログ撮影と比べて画像がどうかという点がフォーカスされ、その他のメリットを期待する意見は目立たなかったように思います。
アナログ時代のレントゲン撮影は光に一瞬たりとも触れたらダメになってしまうというレントゲンフィルムの扱いに終始気を遣う作業の繰り返しでした。自分自身、いったい何枚のフィルムを感光させゴミ箱送りにしたことか。。。
現在のように端末の画面に瞬時にレントゲン画像が映し出される環境に慣れてしまっている環境では想像すらできないですが、”診断できるレントゲン写真”がちゃんと出てくるかどうか、その良し悪しがいちいち問われた時代でした。
レントゲン検査は撮影に先立って、半畳に満たない光の入らない暗室の中で、半ば手探りで縦横B4程のレントゲンフィルムをカセッテという”遮光されたバインダーのような入れ物”に撮影枚数の分だけ、一枚づつ挟み込む作業(下写真)から始まります。
そして、撮影の度に暗室に戻って、再びフィルムを取り出して現像するという、手順を要する作業の繰り返しでした。
当時、既に自動現像機という”画期的?な装置”が普及しており、フィルム現像の工程は自動化されていたため、装置にフィルムを入れれば、”とりあえず”、現像されて出てはくるのですが、一枚当たり7-8分もかかりました。
もちろん、自動現像とは言ってもその手順が自動なだけで、現在のようにディスプレイに”キレイな画像”が自動的にパッと出てくる訳ではありません。なぜか同じ条件で撮影したにもかかわらずいろいろな画質の写真が出てくるのですが、その画像をその後に調節することもできできません。
で、少しでもダメなら全部撮影からやり直しです。
繰り返して数枚撮影する時には、暗室とX線室を何度も往復しなければならず、出てきた画像が”ダメ出し”されればそれまで費やした時間は無に帰します。
放射線技師もいない上に、動物の動きが自由にならない動物病院では4枚程度のレントゲン写真を見るために汗だくで撮影から30分以上ということも、まあよくある話でした。
さらに撮影作業以外にも自動現像機のクリーニングや現像液など水物の交換やメンテナンス、廃棄物処理に至るまで手間とコストがかかったものです。
その昔、その自動現像機の恩恵さえなかった時代のことはもはや想像さえしたくありませんが、暗室の中で「現像液→定着液→洗浄液→乾燥」という現像の工程をすべて手作業で行わなければなりませんでした。
現像液などの薬液の濃度や温度、フィルムを各々漬ける時間配分など経験に頼る部分が多く、現像のノウハウにおいて写真家のような職人芸が必要だったようです。
振り返ってみると、レントゲン撮影という頻繁に行う検査にまつわる環境が非効率であったために、いかに多くの貴重な時間が奪われていたかということにを気付かされます。。。
デジタルレントゲンはその”画質のよさ”というハードウェアの性能にどうしても目が行きがちではありますが、実はその大きなメリットは撮影作業を取り巻く業務を省力化し、誰が撮影しても短時間で同じ結果が得られるということにもあるのです。
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現在のレントゲン撮影のデジタル化の先鞭をつけたのがX線検出器としての第一世代のCRレントゲンでのイメージングプレートによるデジタル化です。
このイメージングプレートはレントゲンフィルムを入れるカセッテと同じ形状をしており、外見上はフィルムカセッテとあまり区別がつきません。(下写真)
イメージングプレートには、レントゲンフィルムの代わりにX線を吸収してレーザー発光する特殊なフィルムが入っており、この発光を撮影後にスキャン(現像)することでレントゲン画像を得る仕組みです。
また、イメージングプレートは撮影画像を何度でもリセットして使えます。いわば再生可能なレントゲンフィルムが入っているようなものです。
イメージングプレートの最大の利点は今までの環境を変えずにデジタル画像化を行うことができる点です。もちろん旧来のレントゲンフィルムのような現像液などの面倒な扱いもありません。
下の写真が当院で使用していたCRですが、写真中にある装置がイメージングプレートを読み取るスキャナー装置です。
一方でその短所は下の写真のように、イメージングプレートを撮影の度に取りだしてスキャン(現像)しなければならならないことです。つまり、それが終わるまで画像を見ることができず、連続した撮影や取り直しができない点です。
このように、第一世代のデジタルレントゲンであるCRは古いアナログ環境の影響をどうして受けてしまうため、レントゲン検査のデジタル化にいたる過渡期の装置と言えるかもしれません。
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最近では、デジタルレントゲンのシステムはより進化したX線検出器であるフラットパネル検出器(FPD)を用いた次世代のDRに置き換わりつつあります。
次世代型はデジタル第一世代のCRよりもレントゲン検査のさらなる「画像の向上」と「撮影時間の短縮と省力化」、「低被爆化」が達成されてきています。
当院で先ごろ導入したDRレントゲンシステムをご紹介しながら、その特長を説明をしたいと思います。
この製品は富士フィルムが動物医療の環境に対応するべく開発した、最新式のDRデジタルレントゲンシステムです。
下写真でスタッフが抱えている四角い板状の装置がX線を検知して、画像情報の元となるデータを端末に送信するフラットパネル検出器(FPD)です。DRレントゲンシステムを構成する最も重要な装置です。
この装置はX線をとらえてデータ化する撮像素子の集合体、デジタルカメラに例えるとその心臓部の画像センサー当たります。
X線発生装置(光源)から放射されたX線(光)はこのFPDにより感知され、画像の元となるデータに変換され端末に送信されます。この装置は言うなれば巨大なデジカメそのものです。
FPDはレントゲン撮影台の下にあるスペースに通常は隠して設置されますのであまり見ることはありません。
フラットパネル検出器ではCRように撮影の度にイメージングプレートを取り出して別な装置でスキャンする必要はもはやありません。
レントゲン写真は撮影された直後にディスプレイに表示されるため、すぐに高画質なレントゲン画像による診断を行うことができます。
また、このFPDは端末との無線LANによる通信機能を持っており、レントゲン室以外での撮影も可能です。例えば緊急時に待合室や診察室内で撮影を行ったり、手術中にリアルタイムで使用することもできます。
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次にイメージングプレートのCRレントゲンとFPDによるDRレントゲンの画像比較をしてみたいと思います。下の写真はそれぞれ同じ猫の正常な胸部レントゲン写真です。違いがお分かりになるでしょうか?
上がCRで下写真が次世代のDRによるものです。
DRレントゲンの画像の方がくっきり明瞭に見える一方、CRではやや曖昧な印象を受けると思います。
下2枚の写真は同じ犬の胸部レントゲン写真です。どちらも黄色の丸の中に白い円形の何かが見えると思います。
実はこの写真は肺転移した腫瘍のパターンなのですが、上のCRより下のDRの画像の方がよりはっきりと異常を確認できます。どちらも同じデジタルレントゲンなのですが、異常を際立たせるという意味でもDRに優位性があります。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
謹賀新年2019
~ 謹んで新春をお祝い申し上げます。~
旧年中はたくさんの飼い主様と地域の皆様に支えられ、多くの動物達とのかかわりを持たせていただくことができました。
今年は猪年、当院は来月で「設立11年目」を迎えます。
本年度も常に初心を忘れずに地域に必要とされる動物病院であるように、気を引き締めてスタッフ一同努力を重ねてまいりたいと思います。。。
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下の写真は1月6日に全国的に見られたの部分日食の写真です。
新年早々、松の内、日本国内では約3年ぶりの出来事でした。
当地の千葉県船橋市では、午前10時7分に最大食分、おおよそ3割の部分日食となりました。幸い、当日はお天気にも恵まれてキレイにかけた太陽を観察することができました。
お正月早々、なんともおめでたいことだと思いませんか?
日食に興味のある方は以下のブログもどうぞ。。。2012年の記事です。
>金環食(金環日食)
新しいレントゲン設備
開業とともに約10年以上使用してきたレントゲン照射装置を更新いたしました。
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今回更新した設備は下の写真の中央のレントゲン(エックス線)照射装置と付属する撮影台です。テーブルの下には写真では見えませんが、X線(エックス線)を検出してデジタル画像データに変換する フラットパネル検出器(FPD)が設置されています。
近年のレントゲン装置はこのように「照射装置」と「X線検出器」の2つのシステムから構成されています。今回、このブログでご紹介させて頂くのは、このX線照射装置で、この装置は撮影のための光源となるX線を発生・照射する役割を担います。
PETMATE SXA-10S( 島津メディカルシステムズ )
>このレントゲン装置について
X線照射装置はその進歩に伴って、根本的なしくみが大幅に変わる機器ではありませんが、近年では「撮影に最適な性質を持つX線」を「より高出力」で「より短時間」に照射するための技術的な向上が積み重ねられています。
X線照射機の進歩はまた、「動物の大きさや種類ごとの撮影条件の自動化」や「動物医療に最適な操作環境の改善」にも及んでおります。動物病院特有の作業の煩雑さをより少ない方向へ、レントゲン検査のデジタル化と並行して動物達への負担軽減と時代が求めるより一層の低被爆化も進んで参りました。
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ここで、ちょっと脱線しますが、レントゲン検査の進歩のもうひとつの柱といえるのがX線を検出するためのイメージングプレート(第一世代のCRレントゲン)やフラットパネル検出器(次世代のDRレントゲン)と呼ばれるX線検出装置です。
これらは得られた画像情報をデジタル処理する仕組みの中心的役割を担い、まさにレントゲン検査の”デジタル化を象徴する装置”となっています。
デジタル化以前のフィルムによるレントゲン検査は、撮影の度に”光に弱い”レントゲンフィルムを真っ暗な暗室の中で手探りで準備して、撮影後にまた暗室に戻って現像するという、手順を要する面倒な作業でした。
また、現像に熟練を要する部分が多く、画像の品質も必ずしも一定しませんでした。
レントゲン検査の進歩は、「フィルムカメラ」が「初期のデジタルカメラ」(CRレントゲンに相当)に進化してフィルムを現像するという概念がなくなり、さらに「連続撮影・通信機能付きの高画質のデジカメ」(DRレントゲンに相当)になってきた、というカメラの進化に置き換えると理解しやすいかもしれません。
フラットパネル検出器では、レントゲン写真は撮影された直後にディスプレイに表示されるため、デジタル第一世代のCRよりも手順が少なく、より速やかに高画質な画像による診断を行うことができます。
当院ではフラットパネルによる最新のDRシステムをX線照射装置に先立って済ませたばかりですが、この話題はまた次のブログでご紹介いたします。
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次に、レントゲン検査の原理やその仕組みをご説明したいと思います。
レントゲン検査はX線(エックス線)を光源にしたレントゲン写真による画像検査のひとつで、医療における検査手段としてなくてはならないものです。
X線とは強いエネルギーを持つ肉眼ではとらえられない”光”の一種であり、”放射線”に分類されます。
つまり、体の組織をいとも簡単に通り抜けてしまう能力を持っており、その性質を利用して肉眼では見ることができない体内の様子をレントゲン写真として映し出すことができます。
X線は体を簡単に透過できますが、その「内部構造」によって、さまざまな割合で吸収されます。例えば、骨や歯のように固い部分はX線を吸収しやすくほとんどX線を通しません。一方で、脂肪や筋肉組織などの水分の多い軟らかい部分や液体などは一部が吸収されて透過しますが、空気が多い肺などの臓器であれば、ほとんど吸収されずに通してしまいます。
さらにX線が吸収(透過)される度合いは、そこにある異常の有無でも異なってきます。つまりその違いが異常なレントゲン画像として検出されるのです。
レントゲン写真では体を通り抜けたX線が体の中の構造によって様々なパターンで吸収され、X線が多く透過した部分はより”黒く”、透過しにくい部分はより”白く”写ります。明るさを白から黒の濃淡として表現する「白黒写真」をイメージしていただくとイメージしやすいかもしれません。
レントゲン検査というのは白黒画像として作られた、濃淡の微妙な差や変化を臓器や「内部構造」の異常としてとらえて診断につなげる作業なのです。
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ここで、ちょっと脱線してレントゲン検査の歴史はどんなものであったのか紐解いてみましょう。
X線は、1895年にドイツの物理学者であるヴィルヘルム・コンラート・レントゲン博士(下写真)によって発見され、博士はこの功績により1901年に第一回ノーベル物理学賞を受賞しています。
つまり、X線の発見はまさに大発見であったというわけです。
クルックス管と呼ばれる初期の真空管を使って、とある実験をしていたレントゲン博士は、一定の条件の下で、その真空管から物体を透過する能力のある、”未知の光のようなもの”が放出されることを偶然に発見しました。
不思議なことに、その強い”謎の光”は目に見えないばかりか、分厚い本や厚いガラスさえも通り抜けたそうです。
レントゲン博士はそのよく分からない光に、数学での未知を表す”X”から意を得て、X線(エックス線)と名付けました。このX線には強い物質透過性があることから、その証拠として自身のアンナ・ベルタ夫人の手を写真乾板の上に置き、放電管からのX線を15分間も!照射したところ、手の骨と結婚指輪だけの写真が撮れました。
これが有名な「115年前」の世界初のレントゲン写真として現代に残っています。(下写真)
夫人はこの写真を見たとき、「自分の死体を見た気分だわ!」と叫んだという逸話があるとか。
写真の薬指にある黒い塊は金の指輪です。金属はX線を強く吸収して透過させないために写真の上では黒く見えており、現在見慣れているレントゲン画像と比べると、白黒逆転した「反転画像」になっているのが分かります。
現在の最新のレントゲン写真と比較してみると100年以上の技術の進歩は偉大ですね。
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X線の発見によって、人体にメスを入れることなく人体の内部が観察できるという驚きの事実は、誰もが分かりやすくインパクトのあるレントゲン写真という衝撃的な画像と共に、ヨーロッパ域内だけではなく海外にも広く駆け巡りました。
発見から3か月後には日本国内でも紹介され、翌年1896年には、X線の研究に着手していた島津源蔵氏(2代目)が手のX線写真撮影に成功し、その翌年には教育用のX線装置が商品化され、その後の同社での1909年の国内初の医療用レントゲン装置の発売につながります。
ちなみに初代、島津源蔵氏の父親(一代目)が1875年に創業したのが、かの島津製作所だそうです。
この会社は世間一般での知名度こそ低いのですが、理系学部卒にはお馴染みの計測器メーカーであり、精密機器、医療機器、航空機器など目立たないけれども重要な分野を手掛けています。
また、医療用レントゲン装置の開発だけではなく、レントゲン検査のデジタル化の根幹となるX線フラットパネル検出器(FPD)や、科学分野でなくてはならない電子顕微鏡や微量分析器のガスクロマトグラフなど多くの機器を開発しています。
つまり、島津製作所はその歴史の長さに加えて、世間一般の目には触れないものの、今やそれなしでは世の中が非常に困る機器を開発、商品化し続けて来た企業でもあります。
最近では、”現役サラリーマン初”のノーベル賞(化学賞)を受賞した、田中耕一氏が島津製作所の研究者であったことも世の中の話題となったことも記憶に新しいのではないでしょうか。
また、創業者が薩摩の島津家とも関わっているとかいないとか。諸説あるようですが、調べてみると歴史の一部にもつながっているようで、とても興味深いものですね。
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最後にまとめです。
当院で今回導入したレントゲン装置は冒頭にご紹介いたしましたように、島津メディカルシステムズが取り扱う動物病院仕様の最新の製品です。
レントゲン検査の歴史を紐解くうちに、ひとつの医療機器を通じて国内におけるレントゲン装置の黎明期から、さらにはレントゲン博士によるX線の発見の歴史に連なる100年超の年月の積み重ねに思いを馳せられるという、得難い体験ができたことに感謝したいと思います。
100年前には想像さえできない程の高品質なレントゲン撮影がいとも簡単にできるようになった時代に感謝をしつつ、この新しいレントゲン装置を日々訪れる小さな患者さんたちの役に立てるべく、精一杯努力したいと改めて感じます。
だいぶ話がそれてしまいました。。。長文をお読みいただきありがとうございました。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
受付時間

年中無休
平日は朝8時から診療します
※年末年始・お盆は診療時間が短縮になります。
※水曜日、13時以降は手術・処置のため休診です。
千葉県船橋市西船1-19-28 朝日ビル1階
無料駐車場14台
駐輪場9台併設
病院前に6台と隣接する8台の駐車スペースがあります
