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サルコペニアとは?

今回のテーマは動物医療におけるサルコペニアについてです。
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サルコペニア」という言葉を見聞きしたことがあるよと言う方は、実際、医療関係者以外では、おそらくかなり少ないものと思います。まだ、メディアなどでも取り上げられることはほとんどなく、あまり聞きなれない言葉でしょう。
まったくポジティブ感のない綴りも相まって、何やら”よからぬもの”とか病気の一種?などと連想される方が多いかもしれません。それはまあ、当たっているでしょう。
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サルコペニア」とは、ギリシャ語で"sarx,sarcoサルコ"という"筋肉"を表す言葉と、"peniaペニア"という"欠乏、減る"を意味する言葉を組み合わせた、ギリシャ語由来の造語で1989年に人間の医療分野において提唱されました。
こうした言い回しは医学用語でよくみられる造語のルールで、例えば、”白血球が減る”の意味のLeuko-penia(白血球減少症)などと同じ様式です。

つまり、サルコペニアは直訳すると「筋肉減少症」のことです。

歳をとる、病気になる、偏った生活習慣などによって体重の減少をはじめとして、体の様々な機能が落ちて人体が衰弱に向かうということには誰しも納得ができるのではないでしょうか。
こうした身体機能の低下のうち、筋肉の質と量の減少に関して医学的な問題として着目したものがサルコペニアの考え方なのです。
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もちろん、若い時はまだしも、歳をとれば誰しも当然、筋力も筋肉も落ちるわけだから、どこまでが正常でどこからが異常なのか、なんとなくモヤっとさせられるのが正直なところかもしれません。
このようなサルコペニアと呼ばれる状態が正常な「老化現象」と異なる点はいったいどこにあるのでしょうか。

多くの方にとって「筋力の低下」や「筋肉量の減少」は単なる自然な老化現象であり、ほとんどが疾患として捉えるほどの問題ではありませんが、このサルコペニアは単なる「老化現象」にとどまりません。

サルコペニアの疾患としての考え方は、階段の上り下りなどごく当たり前の”日常生活に大きな支障が出るほど深刻な症状を伴う筋肉の減少”ということを特徴としています。つまり、筋肉という体における最大の”臓器”の機能不全と言い換えてもいいかもしれません。
実際、筋肉肝臓のように老廃物となるアンモニア代謝も行なっていることも知られています。

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さて、ここで私たちの動物医療の現場ではどうでしょう。

人と同じように「老化」や様々な「病気」の症状衰弱をきっかけに急速に筋肉量を減らし、人間の医療で定義されるようなサルコペニアとそっくりな状態に陥っていると思われる動物達は、生活環境が大きく変わる入院環境でかなりの割合で見られます。
もちろん、その病気の”かたち”は人のものとは若干異なりますが、発生の仕組みは人の高齢者と大差はなさそうです。

このサルコペニアと呼ばれる現象は、もちろん経験を積んだ獣医師にとってはそれがどういうものであって、どのように悪化していくかのかは経験的には充分に理解しているものであるのは事実です。
ところが、動物医療では疾患としてのサルコペニアは用語そのものの認知度も含めて、まったく浸透していません。

つまり、獣医学では疾患として定義されていないために、それが「寿命」や「生活の質」だけに留まらず「病気」や「治療」に影響を及ぼす可能性がある、体の複雑な仕組みによる医学的な問題だという共通の認識にはまだ至っておりません。
その理由のひとつは病気などで”筋肉が減る”ということがあまりに当たり前すぎて、問題視するための掴み所がない、つまり灯台下暗しなんだろうと想像しますが。。。
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単にサルコペニアという現象面だけを見るならば、これは医学の長い歴史で常に患者の傍にあり続けた問題であり、何も1989年になって突如として新たな脅威が出現したわけではありません。
つまるところ、病気になれば体は痩せて、その機能を失うという誰でも知っている当たり前のことでしかないのです。

実は、人間の医療でこのサルコペニアがクローズアップされてきた背景には、近年の”先進国”での高齢化による医療のあり方の変化が大きく影響を及ぼしています。

ざっくりすぎで怒られそうですが、昔から医学の発展とは人類を脅かす疫病、つまり感染症との戦いの歴史だったと言ってもいいくらいのものです。
近年では、感染症の原因となるさまざまな病原体の特定やその感染の仕組みがどんどん明らかにされ、抗生物質などの画期的な治療薬の登場によりその脅威は過去のものになったように見えます。

生活環境が格段に良くなった先進国では、その後にやってきた高齢化の進展による慢性疾患や”がん”などの病気に医療の主戦場が移りました。
今でも世界的にも医療のあり方が高齢者をターゲットとして細分化と高額化の変化を遂げている真っ最中であり、こうした流れは特に我が国のように同時に少子と高齢化が進むような国家ではより顕著でしょう。

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実は、高齢者が医療の大勢を占めるようになったということと、サルコペニアの問題は切り離すことができません。

高齢者はそもそもの活動レベルが低い状態ですから、病気や怪我をしたり、さらに入院するなど生活環境の変化によってサルコペニアのリスクが格段に高まります。
つまり、それにまつわる問題は「医療コスト」だけではなく社会へ及ぼすコスト、高齢者という大きな集団が生み出す問題として連鎖して社会問題へと変化します。

実は、世の中では医学の問題というのは個々の患者の「病気」や「治療」という本質にして枝葉の問題だけに留まらず、むしろ政治や国の福祉、財政、経済の問題だったりと直結していますからこれは当然のことでしょう。

つまり、このサルコペニアのようなものを医療的な大きな課題として対処しないと、巡り巡って高齢者の医療を含む社会福祉がうまく回らないよ、という警鐘の意味もあるんだろうなと思います。
20世紀の終わりでのサルコペニアのという現象への問題提起は実に先見性に富むものだったのではないでしょうか。
例えば現在、大きな問題となっている認知症骨粗しょう症も重症化する患者さんが社会的な問題になって初めて、これが重大な疾患であると世の中に広く認識されるようになっているのと同じようなことです。

結果として、こうした個々の患者さんの医療問題を超えて、それが国家レベルの社会問題となり得るかどうか、全てが個人の問題に帰する動物医療の切り口と、人間の医療でのより広い視点からのサルコペニアに対する切り口は、そのスタートラインからして全く違うものなのです。
こうした点からも動物医療のこの問題への無関心は、さもありなんといういう感じを受けます。
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なにやらものすごく脱線してしまいましたが、再び人間の医療でのサルコペニアの説明に戻ります。

人のサルコペニアには一次性(原発性)二次性という分類があります。

一次性サルコペニアというのは加齢性サルコペニア年齢以外に明らかな原因が見られないもので、二次性サルコペニアには「活動量に関連するもの」・「疾患が関与するもの」・「栄養が関連するもの」に分けられています。分類とその要因は下記の通りです。

◯「活動量に関連するサルコペニア
 ・ベッドでの安静、不活発な生活習慣、体調不良、重力の負荷がかからない状態

○「疾患が関与するサルコペニア
 ・進行した心臓、肺、肝、腎などの臓器不全
 ・炎症性疾患、悪性腫瘍、内分泌疾患などの基礎となる疾患

◯「栄養が関係するサルコペニア
 ・摂食不良、消化吸収不良、食欲不振など

この分類はほとんどそのまま動物医療にも当てはまります。
サルコペニアとは患者さんの体に起こる、上記のような多くの問題のひとつひとつが組み合わさり、生じる傾向があるようです。

さらに、こうした外的要因に加えて、さらに体のもっと細部のメカニズムのレベルまで突き詰めると、下記のような仕組みが、サルコペニア発症の候補として関わっているようです。
ちょっと専門的で見難いのですが。。。サルコペニアがいかに多くの因子によって起きているのかということを分かって頂くために、列挙してみました。

・身体活動度の低下
・栄養(たんぱく質)不足
・筋たんぱく質の同化抵抗性
・骨格筋幹細胞の減少、活性化不全
・運動神経と支配下にある筋線維の減少
・神経と筋線維の接合不全
・酸化ストレス
・炎症の存在(TNF-α,インターロイキン6)
・ホルモンの影響(成長ホルモン,IGF-1,DHEA)
・インスリン抵抗性
・ミトコンドリア機能低下
・アポトーシス(細胞死)
・ビタミンD欠乏と上皮小体ホルモンの過剰
・筋肉への血流量低下
・骨格筋幹細胞の活性化因子の低下?

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サルコペニア治療予防法に関しては、人では「運動負荷」や「栄養学」の側面からのアプローチが多数なされており、これらを組み合わせることが効果的だということが分かっています。
しかしながら現在のところ、上記の表にあるようなサルコペニアのメカニズムをコントロールするような薬物による治療法は、まだ人の医療分野でも確立されておりません。

人の医療では歩けなくなる前にサルコペニアの進行を止めるため、歩行に必要な筋肉を鍛える必要があり、特に筋肉に負荷をかけながら行うレジスタンス(抵抗)運動が有効であるとされています。
ここでのレジスタンス運動とはいわゆる、”筋トレ”のイメージです。

動物には日常生活の中での自発的な”筋トレ”は困難ですので、いわゆる老犬介護整形外科疾患治療の一環として行われるようなリハビリの手順が有用と思われます。
また、入院環境での寝たままの安静を極力避けるような、さまざまな配慮が必要となります。
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栄養学」の面からは高齢や病気による食事量の低下を極力補うために、食事のカロリーコントロールをしっかり行って栄養の不足に注意して食事を絶やさないこと、特に筋肉を作り出す元となる、たんぱく質を豊富に含む食品の摂取を増やすことが効果的です。

「骨格筋量」「筋力」「身体機能」の維持は、高齢期に不足しがちなたんぱく質の摂取量に深く関係していることが知られています。

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一般的に犬や猫などの伴侶動物は日頃からその多くが規格化された栄養組成を持つペットフードなどの「加工食品」によって栄養管理がなされているのはご存知の通りです。
これは裏を返せば、”よい意味で”食事の多様性がない分、人では難しい厳密な栄養管理カロリーコントロールがむしろ行いやすい環境にあるということです。

実際に多くの食事療法食メーカー患者動物の様々な「年齢」「疾患」「生活環境」「嗜好性」により適応した、より優れた治療用食事療法食の製品開発にしのぎを削っています。
このため、現在では食事療法食の製品の幅は広く、獣医師の治療方針に寄り添いつつ、さまざまな条件の患者動物の状況に合うような食事療法食を選択することができるようになっています。

筋肉の減少を起こしている高齢動物に対して、食べることや排泄に問題がなければ、人の基準のような”カロリーが高く”高たんぱく栄養組成を持つ療法食がまず考慮されることが多いであろうと思います。

ただし、腎臓病をはじめとする疾患の罹患率が高い高齢動物での高たんぱく食を選択するには前もって医学的な評価が必要です。
また、特に消化吸収能力の落ちている高齢、もしくは潜在的に消化器疾患を持っている可能性がある動物への高たんぱく・高カロリーな食事は下痢嘔吐などの問題を生じやすい傾向があります。
疾患を持っているであろう、高齢動物では些細な食事の変更に際しても充分な注意が必要です。

(※)食事療法食の選択はトータルな治療行為の一環として治療と不可分な関係にあります。その選択にあたり、獣医師の知見や助言を前提に設計されている製品ですので、不適切な使用を防ぐために必ず動物病院でご相談ください。
一例として挙げますが、”肝臓が悪い”動物の多くに対してパッケージに”肝臓病”と表記のある療法食を選択してはならないことを獣医師は常識としています。特に本コラムのテーマである筋肉量の減少が見られるようであれば尚更です。

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サルコペニアに対して食事以外からの栄養的なアプローチとして、「運動療法」と合わせての必須アミノ酸の補給が有効ではないかとされています。これは、加齢により、食事だけでは体内で充分なアミノ酸量を維持できないということがサルコペニアの原因になっている可能性があるという研究結果によるものです。
このため、筋肉で代謝され筋肉の元となる、必須アミノ酸ロイシンまたはこれを含む分岐鎖アミノ酸製剤BCAA(イソロイシン・ロイシン・バリン製剤)の有用性が期待されています。
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※動物病院でのBCAA製剤(サプリメント)の一例
⇨ ヘパテクトプレミアム(Meiji Seikaファルマ)

その他にビタミンDEPAエイコサペンタエン酸)、DHAドコサヘキサエン酸)など抗炎症作用が期待される多価不飽和脂肪酸の一部にその効能の可能性がいわれていますが、まだはっきりしない点も多いようです。
また、ビタミンCビタミンEカロテン類ポリフェノール類、それに類する抗酸化物質などによる筋肉・神経細胞の保護効果は限定的ながら可能性があるかもしれません。

最後になりますが、過去の当院のブログに食事量が落ちがちな老齢犬に食事をあげるための簡単な工夫に関しての記事があります。ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。

>高齢犬の「ごはんの工夫」あれこれ

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文責:あいむ動物病院 西船橋
病院長 井田 龍

”狂犬病予防”とは何か?

はじめに。。。

ワンちゃんと生活している方にとっては、春先のこの時期にお住いの自治体から郵送されてくる、毎年同じ「狂犬病予防接種のおしらせ」を手に取ることが一年の節目?のようになっている方は案外多くいらっしゃるのではないでしょうか。。。

今回はあまりにありふれていて、飼い主さんも時として獣医でさえ、それぞれの立場でなんとなく分かっているつもりでいる狂犬病とその予防について、余談も含めていろいろと書いてみました。

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皆さまは、「狂犬病予防」と聞いて何を思い浮かべますか?

もしかすると、世間一般的には、”公園に飼い主さんと犬がワイワイと集まって、獣医さんが次々と打つアレでしょ?”などという、狂犬病予防の集団接種の会場の風景が頭に浮かぶというものかもしれません。実際に、狂犬病がいったい何なのか、何で問題になるのかがよく分からないという方が多いのではと想像します。
ワンコとの生活が長い方でも、狂犬病はとても怖い病気らしいということは分かるけれども、もう日本にはないはずなのに、”なぜ?”予防接種をしなきゃいけないのだろうと毎年、なんとなく続けていらっしゃる方が多いかもしれません。

狂犬病は50年以上も昔に国内から撲滅された感染症です。もはやその病気を実体験として知る方は非常に少なくなり、戦後の出来事と同様に人々の記憶からは消え去ろうとしています。日ごろから予防行政に関わっている私たち獣医師にとっても、狂犬病は既に”教科書の中の伝染病”となって久しく、この病気への関心は高いとはお世辞にも言えません。

ちなみに私は40代後半なので、この病気の実体験は当然ありません。小さい頃に祖母から狂犬病についての逸話や生家の周りで以前あったという「野犬狩り」の話を聞かされたことがある程度です。地元は横浜のはずれでしたが、まだ野犬が出るから危ないと伝えられている場所があったと子供心に記憶しています。

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ところで上記の、なぜ狂犬病予防?”、というくだりの答えは「狂犬病予防接種」とそれに伴う自治体への「畜犬登録」、「鑑札を着けること」は犬を飼育するに上で飼い主の義務となっているからです。(答えになっていないかもしれませんが敢えてこう書きました。)
この義務というのはやった方がよいという努力目標などではありません。それは我が国で犬を飼育する上で狂犬病予防法による法律的な義務を誰であろうと負わなければならないからです。

では、同じように生活している猫は?ウサギやハムスターは?。。。
もちろん、犬以外の動物を飼う上での法律上の義務はありません。

では、なぜ犬だけなのでしょうか?

それは、人間の生活圏で起こる都市型狂犬病は犬をはじめとする人との関係の深い動物がもたらす伝染病であるためです。かつて日本国内で流行した狂犬病は犬が人にもたらす病気としての特徴を強くもっていました。
戦後に流行した狂犬病は、犬の登録義務や予防の実施のみならず、病気を発症した疑いがある犬はもちろん、野犬など感染の可能性のあるのものを排除することで撲滅に成功しました。我が国の法令義務的予防接種のしくみはこうした歴史の延長線上にあるものです。

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ところで、この狂犬病予防法に違反した場合には罰金、さらに起訴や拘留に至るまでの重い処罰の対象となる可能性があります。ご参考までに、法律に定められた飼い主の義務に違反した場合には「20万円の科料」となっており、これは「予防接種をしなかった」だけではなく、単に「鑑札を着けていなかった」ことにも及びます。

いかがでしょうか?随分と重いと感じられたはずです。

実際にはかなりの方が法律違反を犯しているのではと推測できますが、その実態は「あまり取り締まられない交通違反」のようなものです。”ノルマを課してまで”熱心に違反を取り締まる警察に比べると、狂犬病予防法を管轄する行政の姿勢が各自治体ごとにバラバラで総じて鈍いためです。

狂犬病予防法の義務や罰則がやや重く感じるのは、狂犬病の制圧を求められていたという法律の制定時の時代背景もありますが、この法律がいつか起こるかもしれない狂犬病の発生という”緊急事態”を想定したものであることもその理由のひとつでしょう。狂犬病が発生していない”平時”の行政の取り締まり姿勢が”意図的に緩い”のもそういう理由かもしれません。

ちなみに当院は千葉県船橋市市川市からの患者さんが大部分を占めますが、市境にお住いの患者さんの話よると未接種世帯への督促は、市川市>>船橋市のようで、”お隣なのに船橋は緩くて、市川は厳しい”という意見がよく聞こえてきます。
市境を家一軒分跨ぐだけで自治体の対応が違うというのはどうなのかと正直思いますが、こうした行政側の都合が法律の順守を曖昧なものにしている点は否定できません。

罰則を伴う法律の運用が自治体によりまちまちで「行政の一部門のヤル気に依存する」というのはどうも困ったものです。。。

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ちょっとここで一旦、法律的な問題は横に置いておくことにしましょう。

日本国内での犬の咬傷事故は届け出だけで年間6000件はくだらないだそうです。この数字をぱっと見ると何やら少ないような気もしてきますが、実際のところはよく分かりません。
ところで、こうした事故の際に、予防をしていない犬がもし他人を噛んだりケガをさせた場合、またはその疑いをかけられた場合、狂犬病未接種だった場合には意外なリスクが潜んでいることをご存知でしょうか?

以前、通りすがりに足首に歯が当たったということからトラブルに巻き込まれた、おとなしい小型犬の例を経験したことがあります。そうしたまさに貰い事故みたいなものであって、仮に加害者に非がない場合でも狂犬病予防を怠っていた場合には、それはもう法律違反ですから、その一点で加害者の立場はより悪くなるわけです。

咬傷事故を起こしたと申し立てられた加害者の飼い主さんは、噛んだ犬が予防をしていない場合には狂犬病に罹っていないことを獣医師診断を何度も受け、費用、労力、時間をかけて証明してもらわなければなりません。
この作業を狂犬病鑑定といいますが、獣医師は時折、咬傷を起こしてトラブルに巻き込まれている飼い犬の鑑定依頼を受けることがあります。私が過去に依頼を受けた加害者の方が狂犬病予防接種をしていないという落ち度により、賠償などに関して不利な立場に追い込まれているケースを何度も見てきました。

本末転倒な話ですが、”狂犬病予防をしていない”ということは法律違反であるということだけに留まらず、犬との生活に潜む予想外のリスクを高める可能性があることも知っていただければと思います。
 

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狂犬病予防のシーズンになると、動物病院の診察室では、”うちのタロー、もう10歳だから狂犬病予防接種は受けさせたくないんだけど、大丈夫ですよね?”、”かわいそうだから狂犬病予防をしないようにできる書類をもらえませんか?”などという話が毎年、繰り返されるものです。
私自身、室内飼育の老チワワの飼い主の1人ですから、こういった飼い主さんの心情は個人的にはとてもよく理解できますが。。。

狂犬病予防接種をやりたくない”というご相談には獣医師として、ことあるごとに予防の義務を丁寧に説明を申し上げるのですが、なんだか納得いかないという気持ちを投げかけられることも少なからず経験いたします。
インターネット上でも「個人的事情」をはじめとする不要論、業界利権だとか「副作用で多数が犠牲になっている」などのデマに至るまで様々なものがみられます。

否定的なものの一部にはページビューやアフェリエイト等のために注目されやすい極論で煽るようなサイトも見受けられますが、こうしたことも含めて現行の狂犬病予防の運用の仕組みを不満に感じている方がそれなりの数いらっしゃる現れといってもいいのかもしれません。

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たくさんの意見があるのはもちろんよいことでしょうが、我々獣医師国家資格をもらって仕事をしておりますので、狂犬病予防法に基づく予防の必要性を説明してその促進するという責務を負っています。この点には議論の余地はありません。
こうしたことは税理士さんが「税法」による納税の義務を説明したり、自動車の整備工場が車検の必要な車の所有者に「道路運送車両法」に基づく車検の義務を説明することと何ら変わらないものです。

上記のタロー君に関してのご相談を獣医師に投げかけることはつまり、”もう年だし税金もきついから今年から納税しなくて大丈夫かな?”、と税理士に尋ねたり、”クルマはあまり乗らないから車検を延期できる書類を書いてくれ”、と整備工場に直談判することと同様に意味がないことであるとお察しください。。。

法律的義務などというものは、個人的な心情で納得いかないとか面倒だと思いながらも、法律違反によるペナルティや不都合ゆえに従わざるを得ないものでしょう。狂犬病予防も表面上は業界の悪習や利権のように見える部分があるのかもしれませんが、これも国が定める国民の義務のひとつでしかありません。

なぜか狂犬病予防の「是非の矢面」に立たされることが多い獣医師ではありますが、我々には狂犬病予防法の解釈を変えたり、凌駕するような超法規的なパワーなんてものはそもそも持ち合わせていないということ、狂犬病予防事業獣医師にとっても「義務」であることも、ご理解いただければと思います。

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では「狂犬病」とはいったいどういった病気で、なぜ犬の予防接種が必要なのでしょうか?

狂犬病診断・治療の非常に困難なウィルス感染症で、毎年全世界で5万人以上が死亡する重大な人獣共通感染症、人間と動物の間で起こる感染症のひとつです。
日本国内ではすでに撲滅されており過去の感染症となりましたが、戦中戦後の混乱期には数多くの死者を出して猛威を振るいました。現在でも世界中で発生しており、アジア、アフリカ、南米が流行地域になっています。

狂犬病は一旦発症してしまうと有効な治療がなく、その死亡率は限りなく100%というなんとも恐ろしい病気です。
さらに症状が出るまでの潜伏期間が1~3か月と長いために感染に気付きにくく、その病気に感染したという診断に至らず、しばらく経過した後に発症して「けいれん」や「マヒ」をはじめとする狂犬病に特有な激しい脳神経症状を起こして、急速に死に至ります。

感染の疑いのある場合には暴露後(ばくろご)ワクチンを何度も接種してその発症を防ぐしかありません。2012年、米国で8歳の少女が奇跡的に狂犬病発症した後に生還したことが大きなニュースになりましたが。こうした例は記録の上で10人に満たない稀有なものです。

ー> 狂犬病から生還した少女―米国

狂犬病インフルエンザなどのように人から人への感染を引き起こさないため、現在の国内での感染症対策では優先度は高くありません。ただし、罹ってしまった場合の死亡率は悪名高いエボラ出血熱ウィルスなど、あらゆるウィルス感染症を上回り、”最も死亡率の高い病気”としてギネスに記載もあるということに驚かれる方は多いのではないのでしょうか。

狂犬病は国内での発生は昭和31年以降は公式には記録がありません。このため日本は数十年の長期にわたって狂犬病清浄国となっておりますが、平成18年にフィリピンより帰国した男性が現地で狂犬病ウイルス感染し、帰国後に発症死亡したことが確認されています。

また、昨年9月に日本と同様に清浄国であったお隣の島国、台湾での発生が認められました。台湾での発生は海外からの侵入ではなく、野生動物(イタチアナグマ)によって長い年月、保持されていた狂犬病ウィルスが突如として犬に感染したものでした。狂犬病ワクチンの不足も手伝って台湾社会を震撼させたのはまだ記憶に新しいニュースでしょう。

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多くの方が「狂犬病」と聞いて想像されるイメージはおそらく下のイラストのような犬の姿ではないかと思います。

ところが、こうしたイメージは犬での狂犬病という病気を単純化したものとしては正しくもあるのですが、この病気の本当の理解や予防啓発という意味では誤ったメッセージを発する可能性があります。

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つまり、狂犬病と聞くと、”犬の病気だから人間には関係ないのでは?”という類の病名による勘違いが多く見受けられるということです。それが転じて「狂犬病が発生していないのに狂犬病予防接種が何でうちの子に必要なの?」と考える方が多くいらっしゃるのでしょう。

狂犬病は人間生活に近い動物である犬が人間への感染の橋渡しをすることが多い伝染病です。日本語で「狂犬」となっているため、犬の病気?であるとか、犬だけが関係するものという誤解がしばしば生じています。
狂犬病」は英語では「Rabies」ですが、そこに「犬だけの病気」という意味合いはありません。日本語へ翻訳する際に生じてしまった表現上の誤りがその理由です。

狂犬病の実態は人間生活に身近なのみならずなどの伴侶動物牛馬などの家畜げっ歯類などの野生動物を含めた「すべての哺乳類鳥類に幅広く感染を起こし、そうした媒介動物が人間社会に脅威を与える伝染病です。
各国で、どんな動物が狂犬病もしくは、「狂〇〇病」というかたちで脅威となっているのかはそれぞれ随分と異なります。下図をご覧になってみてください。

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※図は厚生労働省のホームページより引用しました。
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犬への狂犬病予防接種は人への感染機会の多い犬を予防することで、再び狂犬病が侵入した時に飼い犬の集団免疫によって、その蔓延を阻止するための手段です。

つまり、現在の狂犬病予防法で求められている狂犬病予防接種接種をした犬1頭への狂犬病感染を防ぐことではありません。犬の集団から人間社会への感染経路を絶つことこそがその目的なのです。
こうした仕組みをかたちづくるために、法律が定める義務的予防接種として飼い主さん達に課しているというものです。

「高齢」、「かわいそう」、「お金をかけたくない」などの個人的理由で予防接種をしないという選択権は飼い主さんにはありません。いわば罰則を伴う社会責任のひとつと言えるでしょう。

我が国で狂犬病予防が犬のみに義務付けられているのは過去に蔓延した狂犬病感染経路や、狂犬病予防法によりそれを根絶した実績があり、それが理にかなっているためです。

例えば、発生国の米国では犬だけではなく猫に対して接種義務があったり清浄国のイギリスのように義務はない代わりに、感染を疑う動物の徹底排除とする国もあるなど、狂犬病を蔓延させないための手段やルールは国により異なっており、優劣のつく問題ではありません。

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狂犬病予防接種を義務化していない西欧諸国や予防そのものを禁止している豪州を例に出して、日本の予防行政の「後進性」が動物愛護と絡めてしばしばやり玉に上がります。
しかし、国としての対応はその国が狂犬病の侵入に際して、どの点を厳格にして狂犬病のリスクに向き合うと決めたかの違いでしかありません。当然、個人の心情としての動物愛護云々とも無関係なことです。

わが国では狂犬病ワクチンによる平時からの抑止を選んでいますが、一見して煩わしくみえるこうした仕組みは、緊急時には「ワクチン済みの犬の生存を許す」という暗黙の了解を与えるものでもあるでしょう。
一方で義務化をしていない西欧諸国の場合に、合理主義の彼の国々ではその対応がどのようなものになるのか想像してみてもいいかもしれません。

動物及び人に関わる重大な感染症としては、時折ニュース報道などで騒がれる鳥インフルエンザなどが代表的ですが、その発生時には動物には治療はもちろんのこと、ワクチンさえ使われることはありません。
重大な動物の感染症を封じ込めるという目的のため、発症した動物だけではなくその疑いのある動物、さらにその地域の健康な動物を含めての殺処分が広範囲に行われるのはご存知の方もいらっしゃるかもしれません。動物たちにとってみればまさに手段選ばずのこうした事実を私たちは感情論抜きにして受け止めなければなりません。

つまり、切迫した感染症の蔓延を防ぐために、人間社会は動物達をどのように扱うか?ということに行き着くでしょう。次回の狂犬病の再流行の場合にはいかなる対応となるでしょうか?その時々の社会情勢次第ではあるでしょうが、こうした例えは決して極論ではないのです。

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人や動物の国際間の行き来がより頻度を増した現在では、国内への狂犬病の侵入の恐れはむしろ増大しているのが現状です。

わが国では海外から見境なく輸入される様々な種類の愛玩動物に対して、その検疫体制は決して充分とはいえるものではありません。むしろ、狂犬病が予想外の動物や経路から侵入することを常に想定しなければならないのが現状です。
もしかしたら既に国内に侵入して野生動物の間で犬や人間への感染の機会をうかがっている状態かもしれないのです。

さらに、日本国内では狂犬病ワクチン接種率が年々低下して、その実態はおおよそ4割を下回っています。これは国連世界保健機関WHO)が勧告している狂犬病の流行を防ぐために最低限必要とされる接種率70%を大きく下回る予防水準です。

狂犬病は撲滅された過去の病気だから、もう日本では発生しないだろうという楽観的な根拠は全くありません。

犬は太古の昔から、時代とともにそのかたちを変えながら常に人間の最良の友であるとよく言われます。しかし、その一方で、時には狂犬病という恐ろしい感染症をもたらす危険な隣人にもなり得る存在だということを私たちは忘れるべきではないでしょう。

最後に下の図をご覧になってください。赤とピンクで塗られた地域は狂犬病が現在発生し続けている地域です。それと比べると日本をはじめとする青い色の狂犬病清浄地域はわずかでしかないという現実をご理解いただき、狂犬病予防の重要性をあらためて考えてみられてはいかがでしょうか。
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※図は厚生労働省のホームページより引用しました。

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文責:あいむ動物病院 西船橋 病院長 井田 龍

#猫バンバン

年も改まり、ついに「平成最後」のお正月が過ぎ去ってしまいました。今年の冬は昨年よりは多少過ごしやすいのでは?とは思いますが、それでも冬真っ盛りです。

連日、寒さが続いて外に出るのもちょっと億劫になっている方も多いのではないでしょうか?もちろん、屋外生活の猫たちにも、我々よりさらに過酷なかたちでその季節が訪れています。
この季節、屋外生活の猫はできるだけ暖かく安全そうな場所を探し回り、そうした場所に身を潜めていることでしょう。(下の写真は近所の駐車場の常連さん達です。)

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ところで、ドライバーの皆さん、車に乗ろうとドアノブに手をかけた途端に車の下から猫が慌てて飛び出してくるのはよく目にする光景だと思います。突然ですからびっくりしますよね。
車体の陰は猫の外敵から身を隠しやすい場所であり、特に冬季には車の余熱が残る場所は寒さしのぎの避難先にもなっていることはご存知の方も多いでしょう。

”エンジンがかかれば、猫は逃げちゃうでしょ?”

もしかしたら、多くの方は漫然とそう思っているのではないでしょうか?

まさか、エンジンルームに猫が入っているなんてことが想像できず、エンジンをかけている方がほとんどなはずです。毎日、膨大な数にのぼる「まさか」のうちの幾つかが悲劇を生み、その都度ひとつの命が危機に見舞われています。

獣医師であればすべてといっていい程、こうした悲劇の猫たちの姿を多かれ少なかれ必ず忘れ得ない記憶として残しているものです。
エンジンルームの隙間でタイミングベルトなどに巻き込まれて動物病院に運ばれてくる猫の状況は一般の方にはまさに正視に耐えない状態であることも数多く経験します。
生後、まだ数か月程度の子猫の被害が目立つのですが、仔猫は体が小さいため狭い隙間に入りこみやすいということと、まだ経験が少なく車の危険性を学習できずに逃げ遅れるなどの理由からではないでしょうか。

統計などありませんが、病院に連れて来られることもなく、もしくはその場で犠牲となっている猫はかなりの数に上ることは間違いありません。
動物病院にいらっしゃる自動車修理関係の飼い主さん達からは、猫がエンジンに巻き込まれて持ち込まれる車両は多いという話を実際に何度も聞いたことがあります。

ー>「JAF、クルマ何でも質問箱、トラブル」

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社会の片隅に埋もれてしまっているこのような実態に対して、我が国を代表するグローバルメーカーの日産自動車が光を当て続けています。
この日産自動車が推進するCSR(企業の社会的責任)事業の一環?だろうと思うのですが、私たちの生活に身近な猫の悲劇を防ぐために継続的な啓発活動を行っていることを皆様はご存知でしょうか。
毎年、冬季に日産自動車のホームページやFacebook、Twitterなどでそのような啓発を見かけた方もそれなりにいらっしゃると思います。

「猫バンバン」という標語は、車のエンジン始動の前にボンネットを”バンバン”して猫をエンジンルームから追い出す行為を指します。広い意味では車体の下やタイヤハウスなどの物陰に潜んでいる猫に”危ないぞ”というサインを送って、猫を危険から遠ざけましょうという意味合いも含むものと思います。

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実際にはボンネットなど車体をバンバンしたり、ドアの開閉を繰り返したような場合には猫が恐怖を感じてさらに奥へと逃げ込んでしまうという指摘もあるのは確かです。
最終的ににボンネット開けてエンジンルームまでしっかりと確認する必要もあるのかもしれませんし、それでも見つからない場合さえあるようです。
エンジンルームなんて滅多に見ないといというユーザーも多い中、そうした可能性の問題まで対策を求めると「猫バンバン」自体のハードルがとても高いものになってしまいますからそれは考えものです。

完璧を期すのはなかなか難しいものですが、少なくともこうした事実や最低限取るべき行動を多くのドライバーがシェアすれば、全てではないものの痛ましい事故が多少は減る方向には向かうのではないでしょうか。

不充分かもしれないけれど、とにかくやってみましょうということはとても大事なことです。

ー>「猫バンバン」とは?(Wikipedia)
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企業が収益と一見無関係にみえる事業を行うことを単なるイメージ戦略のひとつといえばそれまでですが、大小の社会への貢献を表明するために多くの企業がそういった事業を行うご時世です。
社会貢献を行う企業から消費者へのメッセージは誰もが受け入れらえれ、わかりやすく印象に残るものでなければならないでしょう。

そういった意味で「猫バンバン」という目を引く猫のアイコンとワンフレーズによる、インターネットを賢く利用した啓発活動を選んだ日産自動車の着眼点には素晴らしいものがあると思います。
多額の費用をかけずとも、痛ましい猫の死への世間の認知度を上げるという社会貢献も果たしつつあるでしょうし、自社のイメージアップにもそれなりに成功したのではないでしょうか。

さらに今後の展開として「猫バンバン」という呼びかけだけに留まらず、車のあり方に関わるような何かより実効性のある対策があれば文句なしの出来栄えとなるでしょう。
残念ながら車側のコストアップにつながるような対策のハードルはけた違いに高いと言わざるを得ませんが、それはその時点で動物愛護の視点の問題ではなくなるということでしょうから致し方ありません。

「猫の侵入による外的要因による故障」が車の品質問題だという認識が消費者、それも世界的に起こらない限りはコスト競争に血眼になっている製造業にその選択をさせるのは難しいのは確かなことでしょう。
まあ、購入の際にディーラーオプション品として、猫の侵入を防ぐような装置などがあれば、「猫バンバンプロジェクト」と合わせて日本国内ではそれなりの需要はあるかもしれませんが。。。

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この「#猫バンバンプロジェクト」に好意を感じるような潜在顧客層は普段から猫に何らかの愛情や関心を感じているか、それが昂じて猫を飼っているという社会全体から見ると多いとはいえ限られた人々と言えるでしょう。

猫好き脳のフィルターを通して見ると、そんなことないのでは?と感じるかもしれませんが、実際には猫の飼育世帯率はわが国では昨今の「ネコノミクス」などという造語の話題性にも関わらず世界的に見ても低いわずか9.9%でしかありません。
(2016年、一般社団ペットフード協会調査による)

一方で、さまざまなレベルの「猫嫌い」は猫好きな層に対して無視できないほどの割合で存在していると思われます。そうした無関心以下の層に対してはこのプロジェクトは訴求力はおろか、場合によって嫌悪感さえ生じかねません。

また、さらにこの話題は猫好きに対しても、かわいらしい猫のキャラクターに隠れて表立っては表現されないものの、車という自社が製造しているプロダクトが引き起こす可能性のある猫の死などの凄惨性の強いネガティブなイメージを伴っています。

強調しすぎれば、なんでも他責の世の中(特に企業には)ですから、藪蛇的にあらぬ方向から話が自社製品の問題に及んだり、なぜ対応をユーザー任せにするのか?などという責任の一端を負わされかねない、なんてこともあるかもしれません。

とりわけ猫にシンパシーのない層にとっては迷惑な猫によって大事な車の価値が損なわれたり、事後処理や故障への金銭的、精神的負担を生じる可能性のある問題でもあるわけですから。。。

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このプロジェクトが、その受け手によるマイナス面を持っているのかどうかは実際には分かりません。
いずれにせよ日産自動車が事故に巻き込まれる猫に自社プロダクトが関係する可能性がある、という微妙なリスクをとりつつこうした活動を継続的に行うということは意義深いものがあると思います。

万人受けを狙うばかりに「木を植える」ような優等生的な活動が人や資金の投入に見合わずイメージ戦略としていまひとつであったり、差別化できずに金太郎飴的に埋もれてしまったりとイメージづくりとはなかなか大変なものでしょうが、「猫バンバン」がターゲット層に与える印象はそうしたものとは対照的です。
日産自動車の判断はココと決めた層には非常に分かりやすく強い印象を残すことができるという点でイメージ戦略とはこうあるべき、といういいお手本といえるのかもしれません。

今後の展開としてあるかどうかわかりませんが、もし、こうした取り組みがメーカー1社にとどまらず業界全体に、さらに異業種などをと巻き込んで起これば「我々、猫が好きでたまらない層」に留まらず、ちょっとだけですが世の中が明るくなるような気がいたします。。。

年初から、昨年末から続くゴーン前会長の事件で逆風を受け続けている日産自動車ではありますが、今年も「#猫バンバン」プロジェクトは継続されているようですので、微力ながら応援させていただきたいと思っております。

何やら余談が長くなってしまいましたが、さて、皆様いかがお感じになるでしょうか?
ご興味のある方はぜひ下のリンクをぜひ訪れてみてください。

ー>「のるまえに猫バンバン」
  (日産自動車のサイトへリンクします)

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文責:あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍

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