船橋、西船橋にある動物病院です   診療内容 犬、猫、フェレット、ウサギ、ハムスター。その他の動物についてはご相談ください

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年末年始はご注意を!

メリークリスマス!2020年もあとわずかとなりました。。。

さて、今日はクリスマスイブ本番。。。外出自粛の影響はありますが、どこへ出かけても街はクリスマス一色、真っ只中です。

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ところで、日本での最初のクリスマスは、かの有名なフランシスコ・ザビエルが来日した時代、江戸時代が始まるちょっと前の西暦1550年くらいにまで遡るそうです。
この時代はというと、キリスト教徒がまだキリシタンなどと呼ばれていた大昔です。。。

もちろん現在の”商業的クリスマス”とは似ても似つかない純粋な宗教的習わしであったのでしょうが、それを無理やりつなげると、我が国における”クリスマスみたいな風習には意外に長い歴史があるといことなんでしょうね。

現代の我々はというと、毎年毎年、同じような風景の中で同じようなメロディーを聴き、LEDやプロジェクションマッピングなどで年々パワーアップするイルミネーションで街のあちこちが彩られる中、あたふたと消費生活に翻弄されるわけですが。。。

まあ、イブの夜は年々賑やかさを増していますが、日本人による日本人のためのクリスマスの原風景みたいなものはここ数十年はあまり変わってはいないようです。。。

今年も、ああ年末だなー、大晦日に向けてあと少しで今年も終わるという感傷的なボルテージが一気に高まるタイミングでもあります。

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そろそろ本題に入りますが、動物病院的にはこのクリスマスから年末にかけての時期というのはやはり、いつもと違うパターンで患者さんがいらっしゃいます。

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クリスマス前後から大晦日、年明けにかけて、実にさまざまな原因による大小の胃腸のトラブルや問題を訴える患者さんが明らかに増えるのですが、今回はこの切り口で、考えていきたいと思います。

「胃腸の問題」といってもその程度はいろいろです。軽い嘔吐下痢などの軽いものから、直ちに内視鏡検査胃カメラ)を要するような事例、骨や食材が異物となって生じる腸閉塞を筆頭とする急性腹症開腹手術に至る重症例まで実に幅の広いものなのです。

こうした胃腸の問題を全部引っくるめた、最初の”嵐”が「クリスマスイブ」にやってきます。

我々、獣医療関係者にとっては、何やら不謹慎ではありますが、”サンタが街にやってくる♪”などという曲とともに病気や事故もやってくる、とでも言いましょうか。。。

では、クリスマスに起こりやすいこうしたトラブルの原因とは何でしょうか?

まず、この時期には動物達(人も)が普段食べないような、扱いなれない”贅沢な食べ物”が家庭内にどんどん持ち込まれること、それにつきます。
また、小さな子供達が学校から解放され、家庭内に戻ってくるということもそれに拍車をかけるかもしれません。

クリスマスには動物達には魅力的で、場合により危険な食品やその廃棄物が家庭に溢れかえります。アルコールも入って、ついついその場の盛り上がりやノリで、まあいいだろうとつい色々なものをあげてしまう機会も飛躍的に増えるでしょう。

いつもより盛りだくさんのテーブルからこぼれ落ちるご馳走、ゴミ箱に入ってもなおその魅力を失わない残り物、脇が甘く格好の標的となる子供達、酔いが回ったお父さん、など直ちに問題を生じるようなトラップがたくさん仕掛けられています。

イブの夜には、クリスマスチキンなどの骨類や肉のカタマリやクリームなどの高タンパク高脂肪、大量の砂糖類など、いつもと違う一風変わった食材や調味料など、その原因には事欠きません。そもそもの食べ過ぎも相まって嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸トラブルが数多く発生します。
また、生ケーキなどのデザートなどに含まれるチョコレートナッツ類アルコール類などによる中毒なども増えます。
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まず、クリスマスチキンをはじめとする骨を含む残飯の盗食に細心の注意を払いましょう。
実は骨だけではなく、クリームがついたケーキの包装やろうそく、クリスマスプレゼントの犬用おやつやオーナメントもこの時期に消化管閉塞などの原因としてありがちな異物です。

事例として多い鳥骨はその大きさや形状から、慌てて食べた小型犬種で特に咽喉頭部(のど)や食道に詰まりやすく、食道閉塞などをはじめとする命に関わる急性消化管閉塞を引き起こす可能性があります。
こうした場合、異物となった骨の除去のためにクリスマスイブの夜に緊急の内視鏡手術を要する確率は相当高くなります。
過去の関連記事で食道閉塞に関して説明してありますのでご興味のある方は当院過去ブログをご覧ください。
>危険な食道閉塞に関して

また、食道を通り抜けるくらいには小さくなった鳥の骨などの異物をある程度含むものを一気に食べ過ぎると、胃運動の低下や胃液の不足によってこれらを充分処理できずに急性胃拡張を起こすことがあります。
さらに、そうした胃で処理しきれない食事の塊や骨などを含む胃内容物が時間の経過とともに下流の十二指腸以下の小腸閉塞を引き起こす可能性もあります。

最悪の場合、急性胃拡張の治療のために、緊急の麻酔下での胃洗浄胃腸切開などの外科手術に追い込まれる可能性もありますし、手術に至らずとも急性膵炎や、入院が必要になるような重大な消化器疾患合併症つながることもしばしばですので、くれぐれご注意を。

また、普段食べ慣れていない高脂肪高タンパクの食材だけが問題を起こすだけではありません。通常の食材でも、食べ過ぎによって思いがけないような激しい急性胃腸炎急性膵炎の原因となりますので、食事量が増えやすいこの時期には特に注意を払って頂きたいと思います。

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次に犬猫に危険な食材として有名なチョコレートですが、クリスマスシーズンのチョコレート中毒(テオブロミン中毒)には実はバレンタインデーの時期と同様にしばしば遭遇します。
英国での調査研究ではチョコレート中毒の発生はクリスマスになんと平時の4倍も増えるという調査結果が出ています。

もともと12月には我が国でも欧米には及ばないようですが、チョコレートそのものの消費もバレンタインデーで大量消費される半分くらいまでには増えるということです。

加えて最近ではクリスマス用のケーキも生クリームたっぷりのいちごケーキ以外の選択肢も増えました。
製菓用チョコレートで作る愛情、カカオマスともにたっぷりの手作りチョコケーキはかなり危険ですし、市販品の贅沢に生チョコを大量に使用したものなども多く出回っていますので、ご家庭ではくれぐれもご注意ください。

少量だからと、ついついあげてしまったりしてしまいがちですが、実は小型犬では容易に中毒量致死量に達しやすく、命に関わる事例もしばしば生じます。特に最近多い体重が2キロ以下のチワワやトイ・プードルなど小型犬種で重い中毒症状を引き起こし、死亡率が高くなる傾向がありますので注意が必要です。

ちょこっと目を離した隙に大型犬でホールケーキをまるごと、小型犬でもビックリするくらいのことがありますのでご注意を。。。また、少数ですが猫での事例もあります。

チョコレート中毒に関しては過去の記事がありますので参考になさってください。
>チョコレート中毒とは?

ここまで長文を最後までお読みになっていただき、ありがとうございました。

皆様にとって楽しいクリスマスイブと幸せな新年が訪れますように!

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あいむ動物病院西船橋
井田 龍

#猫バンバン

いつの間にかもう師走ですね。

今年の冬は多少過ごしやすいのでは?とは思いますが、それでも冬真っ盛りとなって参りました。

連日、寒さが続いて外に出るのもちょっと億劫になっている方も多いのではないでしょうか?

もちろん、屋外生活の猫たちにも、我々よりさらに過酷なかたちでその季節が訪れています。
この季節、屋外生活の猫はできるだけ暖かく安全そうな場所を探し回り、そうした場所に身を潜めていることでしょう。(下の写真は近所の駐車場の常連さん達です。)

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ところで、ドライバーの皆さん、車に乗ろうとドアノブに手をかけた途端に車の下から猫が慌てて飛び出してくるのはよく目にする光景だと思います。突然ですからびっくりしますよね。
車体の陰は猫の外敵から身を隠しやすい場所であり、特に冬季には車の余熱が残る場所は寒さしのぎの避難先にもなっていることはご存知の方も多いでしょう。

”エンジンがかかれば、猫は逃げちゃうでしょ?”

もしかしたら、多くの方は漫然とそう思っているのではないでしょうか?

まさか、エンジンルームに猫が入っているなんてことが想像できず、エンジンをかけている方がほとんどなはずです。毎日、膨大な数にのぼる「まさか」のうちの幾つかが悲劇を生み、その都度ひとつの命が危機に見舞われています。

獣医師であればすべてといっていい程、こうした悲劇の猫たちの姿を多かれ少なかれ必ず忘れ得ない記憶として残しているものです。

エンジンルームの隙間でタイミングベルトなどに巻き込まれて動物病院に運ばれてくる猫の状況は一般の方にはまさに正視に耐えない状態であることも数多く経験します。
生後、まだ数か月程度の子猫の被害が目立つのですが、仔猫は体が小さいため狭い隙間に入りこみやすいということと、まだ経験が少なく車の危険性を学習できずに逃げ遅れるなどの理由からではないでしょうか。

統計などありませんが、病院に連れて来られることもなく、もしくはその場で犠牲となっている猫はかなりの数に上ることは間違いありません。
動物病院にいらっしゃる自動車修理関係の飼い主さん達からは、猫がエンジンに巻き込まれて持ち込まれる車両は多いという話を実際に何度も聞いたことがあります。

ー>「JAF、クルマ何でも質問箱、トラブル」

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社会の片隅に埋もれてしまっているこのような実態に対して、我が国を代表するグローバルメーカーの日産自動車が光を当て続けています。
この日産自動車が推進するCSR(企業の社会的責任)事業の一環?だろうと思うのですが、私たちの生活に身近な猫の悲劇を防ぐために継続的な啓発活動を行っていることを皆様はご存知でしょうか。
毎年、冬季に日産自動車のホームページやSNSなどでそのような啓発を見かけた方もそれなりにいらっしゃると思います。

「猫バンバン」という標語は、車のエンジン始動の前にボンネットを”バンバン”して猫をエンジンルームから追い出す行為を指します。広い意味では車体の下やタイヤハウスなどの物陰に潜んでいる猫に”危ないぞ”というサインを送って、猫を危険から遠ざけましょうという意味合いも含むものと思います。

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実際にはボンネットなど車体をバンバンしたり、ドアの開閉を繰り返したような場合には猫が恐怖を感じてさらに奥へと逃げ込んでしまうという指摘もあるのは確かです。
最終的ににボンネット開けてエンジンルームまでしっかりと確認する必要もあるのかもしれませんし、それでも見つからない場合さえあるようです。
エンジンルームなんて滅多に見ないといというユーザーも多い中、そうした可能性の問題まで対策を求めると「猫バンバン」自体のハードルがとても高いものになってしまいますからそれは考えものです。

完璧を期すのはなかなか難しいものですが、少なくともこうした事実や最低限取るべき行動を多くのドライバーがシェアすれば、全てではないものの痛ましい事故が多少は減る方向には向かうのではないでしょうか。

不充分かもしれないけれど、とにかくやってみましょうということはとても大事なことです。

ー>「猫バンバン」とは?(Wikipedia)
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企業が収益と一見無関係にみえる事業を行うことを単なるイメージ戦略のひとつといえばそれまでですが、大小の社会への貢献を表明するために多くの企業がそういった事業を行うご時世です。
社会貢献を行う企業から消費者へのメッセージは誰もが受け入れらえれ、わかりやすく印象に残るものでなければならないでしょう。

そういった意味で「猫バンバン」という目を引く猫のアイコンとワンフレーズによる、インターネットを賢く利用した啓発活動を選んだ日産自動車の着眼点には素晴らしいものがあると思います。
多額の費用をかけずとも、痛ましい猫の死への世間の認知度を上げるという社会貢献も果たしつつあるでしょうし、自社のイメージアップにもそれなりに成功したのではないでしょうか。

さらに今後の展開として「猫バンバン」という呼びかけだけに留まらず、車のあり方に関わるような何かより実効性のある対策があれば文句なしの出来栄えとなるでしょう。
残念ながら車側のコストアップにつながるような対策のハードルはけた違いに高いと言わざるを得ませんが、それはその時点で動物愛護の視点の問題ではなくなるということでしょうから致し方ありません。

「猫の侵入による外的要因による故障」が車の品質問題だという認識が消費者、それも世界的に起こらない限りはコスト競争に血眼になっている製造業にその選択をさせるのは難しいのは確かなことでしょう。
まあ、購入の際にディーラーオプション品として、猫の侵入を防ぐような装置などがあれば、「猫バンバンプロジェクト」と合わせて日本国内ではそれなりの需要はあるかもしれませんが。。。

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この「#猫バンバンプロジェクト」に好意を感じるような潜在顧客層は普段から猫に何らかの愛情や関心を感じているか、それが昂じて猫を飼っているという社会全体から見ると多いとはいえ限られた人々と言えるでしょう。

猫好き脳のフィルターを通して見ると、そんなことないのでは?と感じるかもしれませんが、実際には猫の飼育世帯率はわが国では昨今の「ネコノミクス」などという造語の話題性にも関わらず世界的に見ても低いわずか9.9%でしかありません。
(2016年、一般社団ペットフード協会調査による)

一方で、さまざまなレベルの「猫嫌い」は猫好きな層に対して無視できないほどの割合で存在していると思われます。そうした無関心以下の層に対してはこのプロジェクトは訴求力はおろか、場合によって嫌悪感さえ生じかねません。

また、さらにこの話題は猫好きに対しても、かわいらしい猫のキャラクターに隠れて表立っては表現されないものの、車という自社が製造しているプロダクトが引き起こす可能性のある猫の死などの凄惨性の強いネガティブなイメージを伴っています。

強調しすぎれば、なんでも他責の世の中(特に企業には)ですから、藪蛇的にあらぬ方向から話が自社製品の問題に及んだり、なぜ対応をユーザー任せにするのか?などという責任の一端を負わされかねない、なんてこともあるかもしれません。

とりわけ猫にシンパシーのない層にとっては迷惑な猫によって大事な車の価値が損なわれたり、事後処理や故障への金銭的、精神的負担を生じる可能性のある問題でもあるわけですから。。。

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このプロジェクトが、その受け手によるマイナス面を持っているのかどうかは実際には分かりません。
いずれにせよ日産自動車が事故に巻き込まれる猫に自社プロダクトが関係する可能性がある、という微妙なリスクをとりつつこうした活動を継続的に行うということは意義深いものがあると思います。

万人受けを狙うばかりに「木を植える」ような優等生的な活動が人や資金の投入に見合わずイメージ戦略としていまひとつであったり、差別化できずに金太郎飴的に埋もれてしまったりとイメージづくりとはなかなか大変なものでしょうが、「猫バンバン」がターゲット層に与える印象はそうしたものとは対照的です。
日産自動車の判断はココと決めた層には非常に分かりやすく強い印象を残すことができるという点でイメージ戦略とはこうあるべき、といういいお手本といえるのかもしれません。

今後の展開としてあるかどうかわかりませんが、もし、こうした取り組みがメーカー1社にとどまらず業界全体に、さらに異業種などをと巻き込んで起これば「我々、猫が好きでたまらない層」に留まらず、ちょっとだけですが世の中が明るくなるような気がいたします。。。

今年も「#猫バンバン」プロジェクトは継続されているようですので、微力ながら応援させていただきたいと思っております。

何やら余談が長くなってしまいましたが、さて、皆様いかがお感じになるでしょうか?
ご興味のある方はぜひ下のリンクをぜひ訪れてみてください。

ー>「のるまえに猫バンバン」
  (日産自動車のサイトへリンクします)

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文責:あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍

ペットと新型コロナウイルス

はじめに。。。

当コラムの文章は「動物医療」から見た新型コロナウイルスの位置づけと現状に関して、医療の専門家と異なる獣医師の立場で、私見を交えて医学獣医学の視点から横断的に書いたものです。
また、この文章は令和2年2月下旬の時点で得られた情報を元にしており、その後のアップデートはされておりません。

ご覧になる方は上記の点をご留意の上でお読みください。

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令和2年の始まりと共に、中国武漢発の「新型コロナウイルス」による新興感染症武漢肺炎)の日本への蔓延に関して連日のようにメディアで取り沙汰され始めて1ヶ月少々が経過しました。
連日、メディアからもたらされる情報に多くの方が不安を抱いていらっしゃるであろうと思います。

この1月までは「武漢肺炎」と呼ばれていた感染症は2020年2月にWHO(世界保健機関)の決定により急性呼吸器疾患
COVID-19COronaVIrus Disease 2019)という公式名称を与えられました。ほぼ時を同じくして、その後、我が国への水際対策が功を奏さずに大方の予想通り国内への蔓延が始まることになります。

現在、メディアや公的機関では国内ではこの公式名称は用いず、「新型肺炎」であるとか「新型コロナウイルス感染症」と呼ぶようになっています。

この新型肺炎の原因とされる新型コロナウイルスですが、その感染経路潜伏期間といった感染症の基本情報のレベルにおいても確たるものがないまま様々な情報が錯綜しており、時間を経ても、なお全貌を見せない脅威に対する不安が日々増幅され続けています。

現在、異常に長い潜伏期間無症状感染を拡散するスプレッダーの存在など、既に知られた季節性インフルエンザなどのウイルス感染症とも明らかに異なるこの感染症の特徴から、波及する問題が国内外、各方面に波及して大きな社会・経済問題にフェーズが移行し、より複雑な状況になりつつあります。
そうした不安心理の現れか、マスクに始まりついに”トイレットペーパー”が棚からなくなるという、我々日本人がいつか見た光景を再び経験することとなりました。

当初から、こうした危機に対してその責を持つはずの政治や行政の情報発信の姿勢やリーダーシップの問題は、幾度も繰り返されてきた我が国の危機管理能力の甘さを図らずも露呈しているかのようです。
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混乱状況の下で、特に犬猫をはじめとする飼育動物とその飼い主(人間)の間で、この新型コロナウイルスがどのようにふるまうのか?

この問題は動物と暮らしている方には非常に気になる点ですが、まだそこまで社会的にも医学的にも注意が向いていないことから、あまり問題視はされておりませんでした。

人間社会が混乱した状況ですから、社会的に優先順位が高くない飼育動物においてはその代表格の犬や猫でさえ、この感染症の理解するべき実態とは何なのか、まだ分からないというレベルなのでしょう。

このような情報不足の状況や、深刻度がそうさせるのか想像できませんが、震源地の中国では感染の可能性を恐れるあまりに犬猫などの遺棄や殺害が相次いでいる、という悲しいニュースがいくつか入ってきています。

感染症の蔓延という緊急事態による社会的な混乱に際して、身近な動物たちをどのように扱うのか?

こうした問いに対して極論で考え、行動しなければならないほど、彼の国では切迫した事情があるのでしょう。。。社会体制や文化、国民性が大きく違うとはいえ、我が国でも明日は我が身となり得る問題を孕んでいます。

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折しも2/28にネット情報により、香港で新型コロナウイルスに感染した飼い主の飼育している”犬のウイルス検査”をしたところ、”弱い陽性反応”が検出されたというニュースが犬の感染例のおそらく第一報として入ってきました。
その後、1週間弱でNHKなど大手メディアで報道され始めていますので、そろそろ耳にされる方も増えてくるのではないかと思います。

ニュース内容は下記リンクを参照してください。
>NHK NEWS WEB

国内での報道では、どういった検査無症状の犬が新型コロナウイルス感染症と判断したのか、検査方法など詳細が不明なこと、ただウイルスが付着していただけという反対意見もあるようですので、これらの点に関してさらに続報を待ちたいと思います。

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ここで、まず世間での誤解も多いこの「コロナウイルス」とは一体何者なのか?ということから整理していきたいと思います。

今回の騒動によって軽い咳払いは勿論のこと、日常会話はもちろん診察室でも、コロナウイルスなどと口に出そうものなら、新型コロナウイルスか?!、いったいどういうことなんだなどと眉をひそめられるような雰囲気がすっかり定着してしまった感があります。

その理由はコロナウイルス、イコール新型コロナウイルスという世間の誤った認識が定着しつつあることです。この辺りはワイドショーなど、不安を煽るメディアの影響などもあるのでしょう。

実際にはコロナウイルス自体は、新たに発見された”恐怖”のウイルスというわけではありません。

国立感染症研究所のHPに解説がありますのでご興味のある方はご覧ください。
>コロナウイルスとは

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※写真と模式図は国立感染症研究所のHPより転載

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コロナウイルスはもともと自然界にありふれたウイルスであり、人類だけではなく野生動物家畜飼育動物などあらゆる動物種に分布し、太古から様々な感染症の原因となっています。

人間に感染するコロナウイルスは、既にに人類に蔓延している誰しも経験のある風邪の原因ウイルスとして4タイプが知られています。
風邪の原因の一割ちょっとがコロナウイルスによるものであり、その多くは軽症の上気道炎を引き起こします。大人になるまでにコロナウイルスにかかったことのない人などおそらく存在しないくらいのありふれた感染症のひとつです。

一方で、2002年~の「中国広東省」発の重症急性呼吸器症候群(SARS、サーズ)や2014年~中東発の中東呼吸器症候群(MERS、マーズ)の原因となり、世界的に大問題となった2タイプの”危険な”コロナウイルスが知られています。
今回問題になっている「中国武漢発」のコロナウイルスは、人間に感染する7種類目、近年、人類社会に侵入してきた「新型コロナウイルス」としては3種類目のウイルスになりました。

これら3種類の動物由来の新型コロナウィルスは、いずれもを強く侵して重篤肺炎を起こす特徴があることから、もともと人間に感染して風邪を起こす「旧コロナウイルス」よりも重症度致死率が高くなっています。
こうした病原性の強いコロナウイルス家畜野生動物などを介して人類に伝搬されてきたものです。

2002年にコウモリからもたらされたSARSも、2014年のラクダ由来のMERSも、今回と同様に人類が接触したことのないために免疫を持たない、動物由来の新型コロナウイルスとして流行を起こしました。

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人類史上、今回の新たなコロナウイルス感染症を含めて次々と繰り返されてきた動物由来の感染症、例えばエボラ出血熱日本脳炎、古くはペスト狂犬病などに代表される感染症人獣共通感染症、または動物由来感染症と呼びます。
この人獣共通感染症はWHOで把握されているだけでもなんと200種類以上にも上ります。

動物由来感染症に関して、厚生労働省の分かりやすい解説がありますので、ご興味のある方は下記をご覧になってみてください。
>動物由来感染症ハンドブック

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余談ですが、近年問題になっている「生物テロ兵器」として炭疽菌ペスト菌野兎病菌ウイルス性出血熱ウイルス等の病原体のいずれもが、こうした人獣共通感染症に由来するものだそうです。

今回の新型コロナウイルスが中国武漢の研究施設から漏れたものだという、拭えない疑惑はこうした背景と、実際にコロナウイルスに関する”さまざまな”研究が行われていたということに端を発しています。

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コロナウイルス人類以外にもなどの家畜コウモリをはじめとする多種多様な野生動物に広く分布しています。
もちろん動物医療の対象となるようななじみ深い飼育動物猫、フェレットなどにもそれぞれの種に固有な多くの種類のコロナウイルスが存在します。

このうち、動物医療では全身感染を起こすコロナウイルスとして致死率の極めて高い猫伝染性腹膜炎ウイルスFIPV)が特に有名です。
このウイルス無症状で常在したり、腸炎の原因となる猫コロナウイルス(FCoV)遺伝子変異により病原性の極めて強い猫感染性腹膜炎ウイルスに変化したものと考えられています。

にも腸炎の原因となる犬コロナウイルス(CCoV)がいくつか知られています。このウイルスにより引き起こされる腸炎病原性はそれほど高くはないものの、糞便に大量に排泄されたウイルス経口感染により容易に他の犬に拡散します。
繁殖施設などの飼育密度の高い環境で流行を起こすため、犬の混合ワクチンの一部には犬コロナウイルスに対するワクチンを含む製品があります。

さらにには、少ないながら呼吸器感染を起こす犬呼吸器コロナウイルス(CRoV)や全身に致死性感染症を起こす変異株の存在も知られています。

フェレットでのコロナウイルス感染症は2種類知られており、それぞれ流行性カタル性腸炎(ECE)と呼ばれる腸疾患と、近年明らかとなったフェレット全身コロナウイルス(FRSCV)関連疾患が知られています。
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犬猫などの伴侶動物のコロナウイルスによる感染症は身の回りに広く分布しており、そこには同じように無症状でウイルスを保有する健康な動物も含まれています。

実際にこうしたコロナウイルスが人間に感染症を及ぼした例は知られていません。
また遺伝子変異を起こして生じる猫伝染性腹膜炎ウイルスなどにおいて、その致死率が9割以上に上る重篤感染症もありますが、そうした変異ウイルスおいても同様です。

結論として、一般的には”既知”のコロナウイルスでは他の動物種病原性を及ぼさないという種特異性が高く、イヌヒトネコヒトのような”種の壁”を越えて人間や他の動物に感染することは殆どないとされています。

もちろん、今回の新型コロナウイルスは以前の新型コロナウイルス(SARS、サーズ)同様に野生のコウモリ由来の可能性が言われており、少なくとも人間との”種の壁”を越えた前歴からも、さらに犬や猫との”壁”を越えてしまう可能性を否定することはできません。

先ごろ、香港発の報道であったようにヒトからの間の感染を疑う事例により、要注意であるという状況にはなりました。
もちろん、直ちにそれが人間社会に新たな脅威になるかどうかは現時点ではまだ分かりません。

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実は毎年人間社会で大きな流行を起こすインフルエンザにおいては、犬や猫とその飼い主との感染をおこしたという報告がいくつもあがっています。
さらに2009年のパンデミック(世界的な大流行)を起こして多数の死者を出した新型インフルエンザにおいてもへの感染例の報告があり、現在の新型コロナウイルスにおける危惧と同じ様な状態が引き起こされています。
しかしながら、こうした感染は極めて限られた範囲で起こっており、結果的には過去、現在においても大きな問題にはなりませんでした。

また、我々獣医師にとって身近な問題として、人間の季節性インフルエンザでは”種の壁”を超えてしまう、ヒト→フェレットの感染が身近にあります。
インフルエンザの時期には動物病院にも飼い主さんから感染を受けたと思われるフェレットが時折訪れますが、今のところ問題は生じていないというのが実際のところです。

もちろん、限られた範囲でヒトフェレットインフルエンザ感染がごく普通にあるからといって、飼育動物とのイレギュラーなウイルスのやりとりを問題視しないということではありません。

むしろ危険側から考えると本来あってはならないことが意外に起こっている、ということをお伝えするためです。
飼育動物からのイレギュラーなウイルス感染は”論文の上だけ”で起きていることではない、ということもまた事実です。

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人類は絶えず新たなウイルスを含む病原体の挑戦を太古の昔から受け続け、多くの犠牲を払いつつも生き延びてきました。もちろん、この先も人類とウイルスの戦いは避けようがありません。

結論としては抽象的で、だからどうなんだ?とお叱りを受けるかもしれません。

今回の新型コロナウイルスの脅威に際して、現代社会の弊害ともいえる、情報過多によるる”インフォデミック”を指摘する意見もあります。※
感染症による実害をさらに悪化させることを避けるために、極端な楽観論でも悲観論でもなく、各々が情報を整理して事実をひとつひとつ積み上げ、冷静さを失わずに正しく恐れるという姿勢が大事であろうかと思います。

インフォデミックとは感染症の世界的な蔓延の意味のパンデミックをもじった造語で、さまざまな”情報”が世の中に蔓延して起こる悪影響のことです。

このコラムがご覧の皆さまの情報の糧として、どの程度の役割を果たせるでしょうか。
今後もしばらく続くであろう新型コロナウイルス感染症を”正しく恐れる”ための基礎知識として、何らかの気づきのきっかけとして、多少なりともお役に立てれば幸いです。

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最後に。。。

 WSAVA(World Small Animal Veterinary. Association)、世界小動物獣医師会という世界的な獣医師のグループがあります。

この組織がこのコラムの執筆時点で、2020年3月7日更新の指針を発表しています。日本語訳ページのリンクは以下のとおりですので、ぜひご覧になってみてください。

「新型コロナウイルスと伴侶動物」

また、2月11日時点での「新型コロナウイルスと伴侶動物についてのガイドライン」を発表しており、獣医療関係者が下記の通り説明をするよう求めています。

◯十分に衛生状態を保てる限りは飼っている伴侶動物と一緒にいること 
◯ 猫は屋内にとどめておくこと
◯もし家族や友人で入院している者がいる場合は動物を預けに出すこと
◯ 不安がある場合は速やかに獣医師に相談すること

なお、上記に関する日本語訳ページのリンクは以下のとおりです。

>「新型コロナウイルスと伴侶動物についてのガイドライン」

ご参考になさってください。

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文責:あいむ動物病院西船橋
   病院長 井田 龍

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