動物の病気

ノミアレルギー性皮膚炎

>>>猫のノミアレルギー性皮膚炎とは?

猫にしばしばみられるアレルギー性皮膚炎は大きく分けると、ネコノミをはじめとするノミ類、食物、そしてそれ以外によるアレルギーの3つに分類されます。その中でもノミアレルギー性皮膚炎とは、ノミ唾液腺に含まれるたんぱく質などの物質が抗原として摂取されて引き起こされる「過剰な免疫反応」のことをいいます。これはノミによる吸血はこの唾液により血液を固まらせ難くして行われるためです。

アレルギー反応には大きく分けて、直ちに生じる即時型反応(Ⅰ型約1時間以内)と、時間をかけて生じる遅延型反応Ⅳ型・24~48時間以内)があり、猫のノミアレルギーにはこれらのしくみが各々関与しているといわれています。

ノミは動物の体表面に寄生する1.5ミリ前後の小さな外部寄生虫です。世界中で2200種類以上が認められておりますが、犬猫に寄生するのはネコノミCtenocephalides felis)、イヌノミCtenocephalides.canis)をはじめとする数種類 です。猫に寄生して病害を引き起こすノミのうち最も一般的なものがネコノミであり、犬にも猫にも共通して寄生します。(下写真参照)

近年では、屋内飼育の猫にはノミ予防率の向上や高層化、気密化など生活環境の変化によりその発症率は減少していますが、ノミアレルギーは今だに猫で最も多くみられる皮膚疾患の原因のひとつです。

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>>>猫のノミアレルギー性皮膚炎の症状は?

本来はネコノミ宿主の猫に対してアレルギーを生じにくい傾向があります。そういった猫ではノミに咬まれても軽度の掻痒(かゆみ)や小丘疹(ブツブツ)ができる程度で治癒します。
一方、アレルギーを示す猫では、比較的強い掻痒を伴って腰背部に広範囲に生じる丘疹としてみられる皮膚病変の「粟粒性皮膚炎(ぞくりゅうせいひふえん)」が典型的です。こうした猫では強い痒みのため、同時に全身性の自己損傷性脱毛好酸球性局面(※)無痛性潰瘍などが認められます。しかしながら、これらの症状は多くのかゆみを伴う皮膚疾患と類似するため、外観だけでは区別が困難です。下写真がノミアレルギー性皮膚炎での腰背部に発生した典型的な病変です。

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ノミアレルギー性皮膚炎は1歳以上のほぼすべての年齢で起こり、ノミの数が最多となる夏~秋にかけて症状が悪化しやすくなります。近年では、冬の寒い時期でも暖房をよく使うご家庭では室内でノミが容易に越冬して繁殖するため、一年を通じて発症することもあります。

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※好酸球性局面(こうさんきゅうせいきょくめん)とは、小さなブツブツした丘疹が集まって扁平に盛り上がったものです。直径が約1㎝以上の皮膚病変を「局面」と呼びますが、その表面は出血しやすいピンク色の柔らかい肉芽組織に覆われて正常な皮膚を置き換えてしまったものです。局面は炎症と強い痒みや不快感を伴なって大きな病変となり易く、猫が気にして舐めることでさらに悪化させてしまいます。

好酸球性局面はその表面にアレルギーに関係する白血球好酸球浸潤を伴うのが特徴です。ノミアレルギー性皮膚炎の他に、その他のアレルギーや原因のはっきりしない原因による好酸球性肉芽腫症候群でもよくみられます。

 

>>>猫のノミアレルギー性皮膚炎の診断は?

ノミアレルギーは、症状が他の皮膚疾患と非常に似ているため、それだけで他の皮膚病と区別することは困難です。ノミ成虫虫卵、その排泄物(糞)を発見できれば、診断の大きな手掛かりとなります。重度のアレルギーでは、激しい痒みのため過度のグルーミングによりノミが除去されてしまい認められないことが多くありますので、ノミ取り櫛(くし)などを用いて被毛の間からノミの糞を探します。
ノミ糞の特徴は数ミリ程度の黒色の「」状で、湿らせたティッシュペーパーなどに押し付けると、吸血した血液成分が溶け出して滲んで赤褐色となるため、ほかのゴミと区別することが簡単にできます。

その他には、年齢が1歳以上であること、発症に季節性があるか、猫に外出する習慣があるか否かなど、飼い主からの問診が重要となります。

 

>>>猫のノミアレルギー性皮膚炎の治療は?

まず重要なのは、猫の体の表面に寄生しているノミ成虫駆虫と、環境中に存在するノミ虫卵(さなぎ)の駆除を同時に行うことです。

ノミ成虫駆虫は各製薬会社から多くの効果の高いさまざまな滴下剤が発売されています。卵の「ふ化」や成虫への成長を妨害する効果を併せ持つような薬剤もあり、その選択肢はかなり豊富ですので、動物病院にご相談ください。(下写真、左からレボリューション、アドボケート)
こうした薬剤ノミライフサイクルを考慮して駆虫剤が効果を発揮するように少なくとも2~3か月は使用を継続する必要があります。

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ところが、猫の体表面に寄生しているノミ成虫駆除しても、環境中に存在する虫卵や、(さなぎ)状態のノミが残っていれば繁殖して環境中に生存しているノミの再感染が起こります。このため、環境中に潜むノミを清掃や家庭用の噴霧剤などを用いてできるだけ除去することで、ノミ駆虫剤の効果を最大限に高めることができるでしょう。

ノミのライフサイクルを下図に示します。(バイエル薬品のページより引用)
->ペットのためのヘルスケアLibrary

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ノミ駆除と並行して、ノミアレルギー性皮膚炎を起こしている猫に対しては、皮膚炎症を消失させて痒みを抑えるためにプレドニゾロンなどの全身性のグルココルチコイド副腎皮質ステロイド薬)を使用します。
薬を内服することが難しい猫には、2週間程度にわたって作用するメチルプレドニゾロン酢酸エステルの注射を使用する場合があります。猫は犬と比べて皮膚への細菌などの二次感染はあまり認められませんが、必要があれば抗生物質などを併用することもあります。

原因となっているノミ駆除が行われ、痒み止めなどの適切な対症療法が行われるならば、ノミアレルギー性皮膚炎は速やかに治癒します。
室内飼育の猫にはノミはいないという誤った先入観もあり、家庭内ではノミ成虫は発見されにくく、その寄生に気づけないことがほとんどです。愛猫の「初夏から秋にかけて起こる季節性の痒み」にお悩みの飼い主さんはぜひ一度動物病院にご相談いただければと思います。

下記のサイトでノミに関して基礎知識が得られます。
ー>杉並区獣医師会「知って得するノミの話」

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文責:あいむ動物病院西船橋 獣医師 宮田知花

臍(さい)ヘルニア

>>>猫の臍(さい)ヘルニアとは?

お腹の中から、何らかの臓器脂肪組織などが体外に脱出することを「腹壁外(がい)ヘルニア」と呼びますが、このうち、臍ヘルニアはよくみられる先天性とみなされる問題です。原因はよく分かっておりませんが多くは遺伝性であると考えられます。

先天的「腹壁の外ヘルニア」には(さい、へそ)で起こる臍ヘルニアや、後ろ足の付け根の鼠径輪(そけいりん)で起こる鼠径ヘルニアものがよく知られています。臍ヘルニアをはじめとする腹壁外ヘルニアは猫では少なく、犬ほどは頻発しません。このうち猫で一番多くみられるのは臍ヘルニアです。

臍ヘルニアにはの周りにある臍帯輪(さいたいりん)の内側の腹膜欠損で起こります。ヘルニア内容にはお腹の中の脂肪血管を含む組織を容れていることが多く、などの臓器そのものが脱出することはあまり見られないため、問題を起こすことが少ないヘルニアです。しかしながら大きなものでは、の一部が入り込んでいることもあるためヘルニア内容には注意が必要です。

下の写真が猫のやや大きな臍ヘルニアの実際の写真です。写真のヘルニア内容脂肪組織でした。

猫臍ヘルニア.JPG 猫臍ヘルニア2.JPG

 

>>>猫の臍(さい)ヘルニアの症状は?

臍ヘルニアではそのほとんどがヘルニア輪がすでに閉じており、脱出した脂肪組織のみが皮下に残存するもので、通常は症状は見られません。容貌上の問題だけであれば、不妊去勢手術と同時に際ヘルニア外科的整復が行われることが多いと思います。

臍ヘルニアのうち、ヘルニア輪が開いている場合にはこのヘルニア輪を通じて、お腹の中の構造がヘルニア嚢の中と行き来して問題を生じる可能性があります。ヘルニア内容にはしばしば血管血管に富む大網が含まれています。ヘルニア輪が大きい場合にはさらに腸管などが入り込んでいることがあり、ヘルニア輪絞扼(こうやく、しめつけられること)されて症状がみられる可能性があります。いわゆる嵌頓(かんとん)と言われる状態です。

臍ヘルニア嵌頓のうち、よくみられるものがヘルニア内容に栄養を送っている血管を含む組織の嵌頓です。嵌頓したヘルニア内容には出血うっ血が生じており、強い痛みを生じます。ヘルニア内容腸管であれば、嵌頓によって締め付けられた閉塞壊死を起こせば緊急化して生命の危機に繋がりますこともあります。

 

>>>猫の臍(さい)ヘルニアの治療は?

嵌頓したヘルニア内容など腹腔内臓器であれば緊急に手術を実施いたします。ヘルニア内容脂肪など影響の少ない組織嵌頓による痛みだけの場合や嵌頓せずにお腹とヘルニア内の出入りが容易な臓器であれば早めに外科的整復をいたします。症状のないものであれば手術せずに経過を観察することも多く、不妊去勢手術など、何らかの手術に付随して整復することがしばしばです。

手術ヘルニアの周りの組織剥離(はくり)して、ヘルニア嚢(のう、ヘルニア内容を入れている袋状の膜)を切開してヘルニア内容切除するかお腹の中に戻した後、腹膜縫合してヘルニア輪で囲まれた穴をふさぎます。極端に大きなヘルニアでなければ、手術難易度も高いものではなく、まず再発することはありません。

下の二枚の写真は臍ヘルニア整復手術のものです。左写真はヘルニアを包むヘルニア嚢の周りの組織を除去した後のものです。ヘルニアはこうしたヘルニア嚢という薄い膜の中にヘルニア内容を容れており、ヘルニア嚢は左写真の黄色矢印の間にあるヘルニア輪と呼ばれる構造で腹壁と連続する構造を持っています。
右写真はヘルニア嚢を除去してヘルニアを起こしている内容物を出したところの写真です。ヘルニア内容大網(たいもう、に付着するお腹の中のレース状の膜)の一部に付着する脂肪組織でした。手術はこのヘルニア内容脂肪組織の塊を切除するか、お腹の中に落として腹壁に空いた穴を縫合して終了します。

猫臍ヘルニア3.JPG 猫臍ヘルニア4.JPG

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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

 

二次性上皮小体機能亢進症

>>>猫の上皮小体(副甲状腺)機能亢進症とは?

上皮小体副甲状腺とも呼ばれ、甲状腺に付着するように左右にある3ミリに満たない非常に小さな内分泌を担う組織です。上皮小体からは上皮小体ホルモンパラソルモンPTH)という、生き物が生存しつづける上で必須のホルモンが分泌されています。

このパラソルモンPTH)はビタミンDと共に血液中のカルシウム濃度リンの濃度をコントロールする重要な役割を担っています。
パラソルモンカルシウムからの吸収とからの血液中への放出を促進します。また、腎臓からのカルシウム排泄沈着を抑制して、血液中カルシウムを上昇させる働きがあります。
このパラソルモン分泌がさまざまな理由で過剰になった結果生じる病気を上皮小体機能亢進症、不足することによって生じる病気を上皮小体機能低下症といいます。

ー>上皮小体機能低下症はこちら(犬)

パラソルモンが過剰となる上皮小体機能亢進症には上皮小体そのものに問題のある原発性上皮小体機能亢進症と、カルシウム代謝の破綻を原因として二次性に起こる、栄養性腎性上皮小体機能亢進症があります。
上皮小体機能亢進症原発性二次性腎性栄養性によっても病気が発生するしくみとその症状診断・治療の進め方が全く異なるため、異なる病気ととらえた方がよいかもしれません。当コラムでは原発性二次性上皮小体機能亢進症を分けて説明しています。
上皮小体機能亢進症は3つのカテゴリーの説明は以下の通りです。

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〇原発性上皮小体機能亢進症
高齢犬でまれに生じる上皮小体そのものの腫瘍性増殖などにより、パラソルモン分泌が過剰になり生じるもので、持続的な高カルシウムを特徴とします。

ー>原発性上皮小体機能亢進症はこちら(犬)

〇二次性・栄養性上皮小体機能亢進症
カルシウムが少なくリンの多い、またはビタミンD欠乏を起こすような不適切な食餌や活性型ビタミンDの不足にって持続的な低カルシウムによってパラソルモンの過剰分泌が引き起こされたものです。

ビタミンDは、カルシウムリン代謝を調節する上でホルモンのような役割を持つ物質です。ビタミンDは植物由来のビタミンD2エルゴカルシフェロール)と動物由来のビタミンD3コレカルシフェロール)からなる物質の総称です。
食物から摂取されたり、体内でつくられたビタミンD肝臓腎臓代謝を受けて活性化してその機能を発揮します。活性型ビタミンDカルシウムリンからの吸収を促進して尿への排泄を減らします。また、に含まれるカルシウム血液中に放出させてカルシウム濃度を高める働きがあります。
人間では「日光浴不足」がビタミンDの不足を起こすことが有名ですが、それはビタミンDは食物から吸収されるもの以外に、紫外線によって皮膚でつくられる主要な経路を持つためです。犬猫では日光浴がビタミンDをつくる仕組みに占める割合はわずかで、食物からほぼ全てのビタミンDを補給する必要があります。

〇二次性・腎性上皮小体機能亢進症
慢性腎臓病に続いて生じる上皮小体機能亢進症です。
腎機能不全の進行に伴って、リン排泄がうまくできずに体にはリンが蓄積してきます。リンカルシウムにはシーソーのような調節関係があり、高リンの持続によって体には低カルシウム方向への圧力がかかります。また、腎機能不全によって腎臓でのカルシウム再吸収がうまくできずに尿中に失われ続けることによっても同様なことが生じます。

こうした低カルシウムへの圧力を打ち消すためにパラソルモンが過剰に分泌され続けることで生じるのが腎性上皮小体機能亢進症です。栄養的な問題や腎不全によって二次性に起こる上皮小体機能亢進症では原発性のものとは異なり、高カルシウム血症は見られません。カルシウムの値は正常か、むしろ低下します。

 

>>>二次性上皮小体機能亢進症の症状は?

病気が長期間に及ぶと体のカルシウム量の需要を補うために、骨が壊れてカルシウムが脱出してしまい骨量から骨が弱くなり、病的骨折が生じやすくなります。

二次性腎性上皮小体機能亢進症の場合にみられる症状はその大部分が原因となっている腎臓病によるものです。腎機能不全にる水分保持機能の喪失、尿毒症性物質の蓄積、カルシウムリンなど塩類代謝異常腎性貧血などによってさまざまな慢性消耗性の変化が起こります。脱水多飲多尿削痩元気食欲低下消化器症状など多岐にわたります。

 

>>>二次性上皮小体機能亢進症の診断は?

犬では原発性上皮小体機能亢進症が稀な上皮小体腫瘍を原因とすること、二次性栄養性上皮小体機能亢進症も通常の飼育状態での発生は稀なものですから、上皮小体機能亢進症は実質的に、慢性腎臓病によって二次性に発生する腎性上皮小体機能亢進症によるものといっていいでしょう。
つまり、慢性腎臓病診断された場合にはこの二次性腎性上皮小体機能亢進症を常に念頭に置くということは慢性腎臓病腎不全)の管理の上でも重要になります。

腎性上皮小体機能亢進症はその原因となっている慢性腎臓病診断されており、カルシウム濃度の異常やそれに伴うパラソルモン高値診断されます。カルシウムリン、可能であればパラソルモンマグネシウムの測定を定期的に行い、カルシウム・リン代謝のモニタリングをいたします。
二次性腎性栄養性上皮小体機能亢進症ではリンは上昇しやすく、カルシウム値上皮小体そのものの異常で起こる原発性上皮小体機能亢進症のように高カルシウム血症リンは低下)ではなく、正常かむしろ低下します。

 

>>>二次性上皮小体機能亢進症の治療は?

腎性上皮小体機能亢進症治療は元になっている慢性腎臓病(慢性腎不全)に対する輸液による脱水電解質の改善、摂取カロリーの維持などの対症療法をはじめとして消化器症状腎性貧血などのさまざまな合併症の管理を行い、まずは全身的な症状の改善を図ります。

高リン血症の有無によらず食事中のリン摂取制限リン吸着剤投与を行い、カルシウム・リン代謝の正常化を図ります。また、低カルシウムであればカルシウム剤活性型ビタミンD3製剤カルシトリオール等)も合わせて実施して、カルシウム代謝の正常化を図ります。

二次性腎性上皮小体機能亢進症慢性腎臓病慢性腎不全)の管理の上でもとても重要な疾患です。過剰なパラソルモン腎臓への悪影響を生じ、慢性腎臓病でみられる症状をさらに悪化させてしまうという悪循環を引き起こします。
つまり、腎性上皮小体機能亢進症治療を行うことによってパラソルモン分泌を抑制できれば慢性腎臓病症状の改善、さらには腎臓病そものの進行を抑えることが可能です。

栄養性上皮小体亢進症では、原因となっている食物の中止と、カルシウムリンビタミンDをバランスよく摂取できる適切なペットフードへの切り替えを行います。

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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

 

子宮水腫・子宮粘液症

>>>猫の子宮水腫・子宮粘液症とは?

子宮水腫(水症)、子宮粘液症とはそれぞれ無菌性のさらさらした体液のような漿液やより粘度の高い液体が溜まって子宮が拡張した状態を表します。子宮水腫子宮粘液症の違いは貯留液に含まれる粘りの元となるムチンという物質の量の違い程度であって、ほぼ同じものであろうと考えられています。
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ムチンとは糖タンパクと呼ばれる蛋白質の一種で、あらゆる粘膜から分泌される粘液の主成分です。ムチンを含む粘液粘膜を乾燥や摩擦から守り、病原体感染を防ぐなど、粘膜の機能を維持する上で重要な役割を持っています。
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こういった無害性の液体の貯留は猫ではしばしばみられ、不妊手術時に偶然に発見されます。猫では子宮内膜の何らかの原因による分泌活性の上昇や子宮炎症が原因しているという報告もありますが詳細は不明です。さらさらした漿液の貯留が起こる子宮水腫がほとんどを占め、ムチンの多い子宮粘液症はあまりみられません。

下の写真に猫の子宮水腫を起こしている子宮の写真をお示しいたします。子宮は拡張して子宮壁が薄くなっており、内部に貯留液を貯めています。

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下が子宮内貯留液を吸引したものです。薄い「飴色」のさらさらした漿液が確認できます。この液体は無菌性でした。

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宮水腫・子宮粘液症と似たような疾患で、同じように子宮内貯留液としてを蓄積する致死的疾患として子宮蓄膿症があります。子宮蓄膿症黄体期での黄体ホルモンプロジェステロン)の影響によって生じますが、子宮水腫・子宮粘液症黄体期を含めたすべての発情ステージで生じるため、発症要因としてのプロジェステロンをはじめとする性ホルモンの関わりは不明です。

 

>>>子宮水腫・子宮粘液症の症状は?

子宮水腫の猫のほぼ全ては無症状に経過します。子宮内に大量の液体が溜まり、腹部が膨満することで生じる外見の変化、運動性の低下や腹部膨満に伴う不快感などの諸症状がみられることがありますが、そういった症状は猫では非常に稀です。この病気のほとんどは健康診断や別の病気を疑って偶然に超音波検査で発見されます。また、健康な猫での不妊手術卵巣子宮摘出)の際に子宮水腫が発見されることがしばしばあります。

 

>>>子宮水腫・子宮粘液症の診断は?

なんらかの病歴や症状がなく、超音波検査により、子宮内無エコー性貯留液による子宮の拡張があれば、まず子宮水腫を疑います。
ところで、子宮水腫はこの疾患を迅速かつ確実に診断するという意味においての重要性はあまり高くありません。この病気を確実に診断する重要性は超音波検査レントゲン検査などで区別の難しい、より緊急度が高く致死的子宮蓄膿症を確実に診断ないしは除外するというところにあります。

つまり、子宮水腫は、はっきりとした病歴症状がなく、レントゲン検査超音波検査で偶然みつかった子宮蓄膿症との区別が難しいことがあるということです。
こうした場合には血液検査を実施して白血球数と同時に白血球分画好中球リンパ球好酸球単球などが含まれます)を検査して好中球に強い炎症の証拠があるかどうかを評価します。また、SAA等の炎症マーカーの測定を行い、炎症性所見の有無から子宮蓄膿症かどうかを精査する必要があります。通常、子宮水腫では血液検査においてなんらかの異常を起こすことはありません。

猫ではあまり実施されませんが、判断が難しい場合にはさらに血液中黄体ホルモンプロジェステロン濃度の測定を行い、その値が低ければ子宮水腫、高値であれば子宮蓄膿症の可能性が高まります。ただし、黄体期には子宮水腫子宮蓄膿症どちらも発生する可能性があり、それらを区別することはできませんので、その他の検査と合わせて総合的に判断いたします。

 

>>>子宮水腫・子宮粘液症の治療は?

子宮水腫・子宮粘液症治療に際して有効な薬物治療はありません。子宮内にあまり液体が溜まっていない場合にはこれといった症状もなく、子宮蓄膿症のように短期間に致死的な経過をとる危険性も低いため、定期的な超音波検査を行い経過観察を行うこともあります。
子宮水腫卵巣子宮摘出術によって治癒いたしますので、将来的に子宮内液体貯留が進行してしまう前に、また、その他の新たな子宮疾患の発生を予防するために外科的治療が推奨されます。

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文責:あいむ動物病院西船橋 獣医師 井田 龍

甲状腺機能亢進症

>>>猫の甲状腺機能亢進症とは?

甲状腺は喉のやや下の左右にあり、甲状腺ホルモンなどを分泌する腺組織です。小さな組織ではありますが、人を含めた動物が生存するために必要な代謝をつかさどる甲状腺ホルモンを分泌し続けることで、休むことなく代謝のコントロールを行っています。
それなしにはすべての細胞、その集合体の組織、生物は生き続けることができないという意味で、甲状腺は生命維持装置のひとつとして極めて重要な役割を担っています。

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甲状腺機能亢進症は猫では群を抜いて高い発症率を示すホルモンによる病気、内分泌疾患のひとつです。また、10歳以上の高齢猫でしばしばみられる慢性腎臓病慢性腎不全)と並ぶ代表的な慢性疾患であり、7歳以上の高齢猫のおおよそ1割が甲状腺機能亢進症といわれています。

甲状腺機能亢進症甲状腺で産生・分泌されるサイロキシン(T4)やトリヨードサイロニン(T3)などから成る甲状腺ホルモンの「過剰」にによって起こる全身性疾患です。
その症状は多様ですが、なかでも食欲低下を伴わない体重減少多飲多尿、「行動の変化」などが特徴的な症状として挙げられます。ところが、病気の初期では、食事量の増加や飲水量の増加、ポジティブな行動の変化は飼い主さんには病気とはとらえにくく、それを理由に来院するより、むしろ高齢期の健康診断によって明らかになり易い疾患です。

猫での甲状腺機能亢進症甲状腺良性腺腫性過形成(せんしゅせいかけいせい)によって起こることが多く、甲状腺癌を含む甲状腺腫瘍によるものはあまりみられません。
甲状腺過形成には遺伝的免疫的な背景、食事(キャットフード、缶詰に含まれるイソフラボンヨウ素の過剰)、生活環境(一部プラスチック等に使用される化学物質の影響が示唆される)など様々な要因が複雑に関わっていると考えられています。

甲状腺機能亢進症診断の頻度は1970年代から急増しており、さらに10年程前と比較しても明らかに高まっています。これには猫の長寿化による病気の増加はもちろんですが、それにも増して高齢猫の健康診断の受診が増えたことと、甲状腺ホルモン院内検査で迅速に測定できるようになるなど、高齢猫に対しての医療環境の向上も大きく関わっているものと思われます。

 

>>>猫の甲状腺機能亢進症の症状は?

甲状腺機能亢進症ではたくさん食べるにもかかわらず痩せてくることが典型的な症状としてみられます。その他にも食欲減少脱毛多飲多尿慢性再発性下痢嘔吐などの消化器症状、攻撃的行動や老齢に見合わない活発さ、発情期のような行動など、その症状の現れ方は多様です。つまり、高齢猫で何らかの内科的な問題がある場合には甲状腺機能亢進症があるかどうかを考慮する必要があります。

また併発疾患として肥大型心筋症などの心疾患高血圧症とそれに伴う網膜剥離網膜出血などの眼病変がみられることもあります。
つまり、高齢猫では甲状腺機能亢進症に加えて、心臓病腎臓病がみられることもあるため、そうした症状を起こしている高齢猫ではまず甲状腺機能亢進症の可能性を考慮にいれるべきでしょう。

 

>>>猫の甲状腺機能亢進症の診断は?

身体検査では削痩脱水脱毛が見られることが多く、頚部に大きくなった甲状腺を確認できることもあります。シンチグラフィ放射線物質を用いた画像診断の一種)によって甲状腺の位置とサイズを確認できますが、この検査を行える施設は国内ではほぼないため、甲状腺を触診できる場合には甲状腺超音波検査がその代用となるでしょう。

血液検査ではALPアルカリホスファターゼ)という肝酵素の上昇が多くの例で認められます。ALP肝臓とや「骨の障害」などによって増加しますが、猫では他の肝酵素であるGPT(ALT)と比較したとき、ALPのみが顕著に上昇するのは脂肪肝肝リピドーシス)もしくは糖尿病であることから、甲状腺機能亢進症健康診断から予想する上での有用な指標となります。

甲状腺機能亢進症診断甲状腺ホルモンT4:サイロキシンないしはFT4:遊離サイロキシン)の上昇を確認することで行います。T4の測定そのものは信頼性の高い検査ですが、甲状腺疾患ではない腫瘍感染症臓器不全などがある場合には本来の値と比べて低い値となることがあり、甲状腺機能亢進症診断ができないことがあります。
T4と比べ非甲状腺疾患による影響を受けにくいとされているFT4の測定は、より正確な診断のためにT4と合わせて測定することが推奨されています。

甲状腺機能亢進症診断された場合、合併症としての心臓病高血圧症の管理の必要があることもしばしばです。また、甲状腺機能亢進症と相互に影響し合う慢性腎臓病腎不全)が併発している場合には甲状腺だけではなく、さまざまな慢性疾患を含むパッケージとしての健康管理が必要となります。検査には血液検査をはじめとして心臓超音波検査眼底検査血圧検査などが含まれます。

 

>>>猫の甲状腺機能亢進症の治療は?

甲状腺機能亢進症治療には薬物療法食によるコントロールを目指す内科的治療と、甲状腺を摘出する外科的治療二通りの選択肢があります。
近年、ヨード制限を行った療法食(ヒルズ社のy/d)の発売によって食事療法により甲状腺機能亢進症をコントロールするという選択肢が増えましたが、内科的治療のほとんどはチアマゾールという抗甲状腺薬によって行われています。

チアマゾール甲状腺ホルモンの合成を抑制する薬剤です。低用量から服用を始め、おおよそ1〜3週ほどで効果を示しますが、定期的に行う甲状腺ホルモンの測定結果と症状を観察しながら投与量を調節していきます。
チアマゾールによる副作用はしばしば食欲不振嘔吐などの消化器症状としてみられますが、より重大なものは白血球の一種である顆粒球血小板の減少など血球の異常があげられます。

甲状腺機能亢進症治療に際して特に気をつけなくてはならないのが、高齢猫で多い慢性腎臓病慢性腎不全)の顕在化や悪化させてしまう可能性です。これは甲状腺機能亢進症の猫では腎血流量の増加により、腎機能不全が隠れていることがあるためです。そのため、治療によって甲状腺ホルモンが正常値まで下がると腎臓への血流量が少なくなり腎不全が悪化、ないしは表面化することがあるのです。

甲状腺機能亢進症治療を行うにあたってはさまざまな副作用に注意して定期検査によるモニタリングを続け、腎臓病などの併発症心臓病、高血圧症などの合併症の管理を同時に行い、長期的な全身状態の改善や安定に努めていくことが大切です。

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蝕知できるほど大きくなった甲状腺腫外科的切除の適応になることがあります。通常は大きくなっている甲状腺を摘出しますが、超音波検査手術の際に左右の甲状腺の区別の難しい場合はどちらか一方を摘出することもしばしばです。甲状腺の摘出後に残存した甲状腺の機能が十分でない場合、甲状腺機能低下症がみられることがあり、こうした場合には一定期間、甲状腺ホルモン補充療法が必要となることがあります。

甲状腺の摘出に際してより注意を要するのは、甲状腺に付着するホルモン分泌組織上皮小体副甲状腺)を大きく損傷したり一緒に摘出してしまうような場合です。
甲状腺に付着している上皮小体もまた左右対称に同じ構造があり、通常は片方を切除しても残った側がホルモン分泌を引き継ぎますが、機能的に活発になっている側の切除により残された側の機能が補いきれない場合にはホルモンの不足を生じます。
甲状腺機能低下はそのまま経過をみることもありますが、上皮小体機能低下症、つまりパラソルモンの低下はカルシウム代謝を破壊して致命的低カルシウム血症によるリスクを孕みます。

ー>上皮正体機能低下症はこちら

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文責:あいむ動物病院西船橋 獣医師 荒川 篤尭

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)

>>>猫の瓜実条虫症について

瓜実条虫(Dipylidium caninum)は成虫の長さが数cm〜50cmにも及ぶ消化管内寄生虫で犬や猫によくみられます。
瓜実条虫をはじめとする条虫類片節という「内部に寄生虫卵を大量に含む袋状構造」が連結した集合体がひとつの寄生虫体を形成するという独特の形態をしています。
つまり、条虫の頭部が小腸粘膜に付着して寄生し、その頭部から片節が次々と形成され、数珠繋ぎに下方へ伸びていくように虫体を成長させていきます。

瓜実条虫はをはじめとする条虫類線虫類と並んで、世界的にもよくみられる代表的な消化管内寄生虫のひとつです。当院のある千葉県船橋市周辺でもよく見られる消化管内寄生虫です。感染経路は犬や猫へ感染できる状態へと成長した瓜実条虫を持ったノミなどの昆虫類を食べることにより経口感染します。

 

>>>猫の条虫症の症状は?

瓜実条虫は少数の寄生ではほとんど症状を示しません。なんらかの理由で多数の瓜実条虫が寄生すると元気がなくなったり、食欲が落ちる、軟便や下痢をする、痩せてくる、嘔吐するといった他の病気との区別が難しい症状を発症します。
また、瓜実条虫に感染した犬では寄生虫片節が肛門周囲に付着するために、お尻(肛門周囲)を舐める、地面にこすりつけるといった行動がよくみられます。

 

>>>猫の条虫症の診断は?

瓜実条虫糞便検査で偶然に寄生虫卵が見つかることもありますが、通常は糞便検査瓜実条虫を見つけるために行うことはありません。便中にはたくさんの寄生虫卵を含む寄生虫片節として直腸から排泄され、それが肛門周囲に付着するため、ほとんどがこの特徴的な形状と動きを持つ片節を見つけることで診断されます。

 

>>>猫の条虫症の治療と予防は?

犬猫では条虫の駆除には第一選択薬としてプラジクアンテル製剤(下写真)を使用します。商品名ドロンシット錠やプラジクアンテル・パモ酸ピランテル合剤のドロンタールプラス錠、薬を飲ませることが難しい猫にはプラジクアンテル・エモデプシド合剤のプロフェンダースポット(いずれもバイエル薬品)、その他にもフェンベンダゾール(Panacur、日本未発売)の投与により治療・予防を行うことができます。

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ー> 瓜実条虫症について(バイエル薬品)

瓜実条虫の成長にはノミなどの中間宿主の存在が不可欠です。瓜実条虫の感染を起こしている猫の体表面にはほぼノミが寄生しておりますので、この寄生虫の予防には条虫駆虫と同時にノミを駆除・予防し、清潔な環境を整えることも重要です。

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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

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