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組織球増殖性疾患とは?

>>>組織球増殖性疾患とは?

まず組織球とは様々な種類の細胞を含みますが、白血球のなかで免疫機能に関与する単核細胞の一種です。骨髄で産生され、体外からの異物やウイルスなどに反応しそれらを排除するために働きます。組織球増殖性疾患は、これらの細胞の反応性および腫瘍性増殖性疾患とされており、由来する細胞の種類や病態により分類されています。

一部を除き、そのほとんどが組織球の中の抗原提示細胞とよばれる皮膚ランゲルハンス細胞や間質樹状細胞、マクロファージに由来します。

犬において明確に定義されたものとして以下の4つに分類されます。②皮膚組織球症と③全身性組織球症は、大きくはどちらも「反応性組織球症」に分類され、その発生部位や病態などから区別されています。

>>>組織球増殖性疾患の種類とは?

皮膚組織球腫表皮ランゲルハンス細胞(樹状細胞)由来の腫瘍です。組織球増殖性疾患のなかで最もよくみられる良性腫瘍です。どの年齢でも発生しますが4歳以下の若齢犬で多く見られ、ボクサーとダックスフンドが好発犬種とされています。

好発部位は頭頂部、耳介、四肢です。cvfl:l;。単一、孤立性の主流を形成し、比較的急速(1〜4週間)に成長します。外観は固く赤みを帯びて脱毛したドーム状の結節で、表皮の下の真皮の部分に発生します。

皮膚組織球症(反応性組織球症に分類)

皮膚組織球腫に類似していますが、由来する細胞は間質樹状細胞とされています。2〜13歳の年齢で多く、好発犬種としてシェルティーやコリーがいます。    

好発部位は頭頸部、会陰部、陰嚢、四肢などで、まれに鼻梁部や鼻粘膜にも発生します。真皮に発赤した脱毛や潰瘍を伴う結節を形成し、多発性のこともあります。その場合1〜5cm程度の大きさの結節が、数個から多いと50個以上発生しますが、二次感染を起こさない限り痛みや痒みはあまりありません。

全身性組織球症(反応性組織球症に分類)

由来は皮膚組織球症と同じですが、皮膚を始め、鼻腔、眼瞼、強膜、リンパ節、肝臓、脾臓、肺など内臓も含め全身性に発生、転移します。2歳以上の若齢犬〜中齢犬に発生し、バーニーズ・マウンテンドッグなどの大型犬に多く見られます。病変は眼瞼部、口吻部、鼻鏡、四肢、陰嚢が特に重度になり、肺、脾臓、肝臓、骨髄、鼻腔にも広がります。多中心性で脱毛や潰瘍化を伴った結節を形成します。皮膚の病変では、1〜4cm程度の結節が皮下に多発して拡大しますが、痛みや痒みはあまりありません。重篤化すると食欲不振、体重減少、呼吸促迫、結膜炎などの症状が見られます。

悪性組織球症(組織球肉腫)

悪性腫瘍であり、間質樹状細胞由来のものと、マクロファージ由来のものがあります。どちらに由来するかで腫瘍の進行速度や予後に違いがあります。

中〜高齢の犬で稀に見られ、バーニーズ・マウンテンドッグを始めとし、ラブラドール、ゴールデン、フラットコーテッドレトリーバー、ロットワイラーなどの大型犬に多く発生します。

組織球肉腫(間質樹状細胞由来):生体の様々な部位に発生し、局所性に発生するものと全身に多発するものがあります。皮膚にはあまり病変を作りませんが、存在するときには多発性の硬結した、脱毛や潰瘍を伴う結節を作ります。

病変は脾臓、リンパ節、肺、骨髄などに発生する場合が多く、転移すると中枢神経、肝臓、腎臓などにも広がります。臨床症状では体重減少、食欲低下、昏睡、中枢神経症状、呼吸促迫などが見られ、マクロファージ由来のものよりは生存期間は長いとされていますが、予後は良くありません。

血球貪食性組織球肉腫(マクロファージ由来):このタイプの組織球肉腫は著しい脾腫を伴い、貧血や血小板減少症などの血球減少症が認められます。この病態では貧血が急速に進行し、低アルブミン血症なども併発するため予後は不良です。

 

>>>犬の組織球増殖性疾患の治療法は?

未処置でも数か月以内に自然消失する場合が多く、退縮しない場合は外科的切除や凍結療法が効果的と言われています。特に中年齢以降で発生した場合は退縮しにくい傾向がありますので、切除する場合も多くあります。治療は約50%が免疫抑制量のステロイド薬に反応し、他にシクロスポリンなどの免疫抑制剤を使用する場合もあります。少数例において外科的切除が有効な場合もありますが、多発するため別の部位に再発する場合が多いです。全身症状は見られませんが、多くの症例では長期間の免疫抑制療法が必要になるため、薬剤の副作用などを考慮すると予後にも注意しなくてはなりません。皮膚反応性組織球症と同様に免疫抑制剤を使用しますが、ステロイド薬が無効な場合もあります。また、治療中止後に長期的に無症状である症例もいれば、寛解維持のために継続治療が必要な場合もあります。多くの症例では長期間の治療が必要となり、予後は警戒を要するものから不良なものまで様々ですが、内臓への転移が進行すると治療が困難な場合もあります。治療法としては外科的切除や化学療法が選択され、局所性の場合は寛解することもありますが、全身性の場合の予後は良くありません。

 

>>>犬の組織球増殖性疾患の診断は?

全てのタイプに共通して、腫瘍を完全あるいは部分切除して病理学的検査を行うことで確定診断します。感染症による組織球の浸潤を除外するために特殊染色が必要になる場合もあります。

 

>>>犬の組織球増殖性疾患の予後は?

上記のように、どのタイプの腫瘍かによって予後は大きく変わります。①皮膚組織球腫は良性腫瘍であり転移もしないため経過は良好です。②皮膚組織球症は内科治療に反応するようであれば、比較的長期的な経過を辿ります。③全身性組織球症、④組織球肉腫に関しては、内臓に転移し臨床症状が重篤化することもあるため、特に④は良好な予後は期待できません。全てのタイプにおいて、腫瘍の早期の発見と病理診断が良好な治療への第一歩となります。

 

組織球増殖性疾患について

組織球増殖性疾患は、ヒトでは樹状抗原提示細胞またはマクロファージの反応性および腫瘍性増殖とされています。
イヌやネコにおいても組織球の反応性および腫瘍性増殖疾患が確認されており、細胞の由来や病態による分類が試みられています。
現在のところイヌにおける明確に定義された組織球増殖性疾患として①皮膚組織球腫、②反応性組織球症、③組織球肉腫の3つが挙げられています。
今回はまずこれらの由来となる組織球の概要を解説し、その後イヌにおけるこの3つの疾患の臨床的挙動や病理組織学的所見についてピックアップしたいと思います。

◎組織球について
組織球と言う用語は様々な種類の細胞を含んでいますが、機能上の分類から一般に抗原提示細胞と抗原処理細胞に大別されています。
抗原提示細胞の主なものとしては、皮膚ランゲルハンス細胞や間質樹状細胞などが挙げられます。
抗原処理細胞は血液中の単球や組織中の大食細胞(マクロファージ)です。
前述した3つの疾患は、ごく一部のサブタイプを除き抗原提示細胞由来とされています。


①皮膚組織球腫

○由来
 イヌの皮膚組織球腫の由来は皮膚ランゲルハンス細胞とされています。皮膚ランゲルハンス細胞は表皮のケラチノサイト間に存在する樹状抗原提示細胞です。

○臨床的特徴
 一般的に良性腫瘍として扱われており、急速(1~4週間)に増大するものの1~2ヶ月後に自然に退縮します。
 通常直径2.5cm以下のドーム状の腫瘤を形成し、脱毛や潰瘍は一般的に見られます。
 どの年齢でも発生しますが、特に3歳未満の若齢犬に好発することが分かっています。
 組織球腫の由来はランゲルハンス細胞であり、局所リンパ節に遊走しやすいという特徴を持っています。そのため、無痛性のリンパ節症が比較的良く見られるようです。

(弊社のデータとしては半数の症例が3才以下であり、残りの半数は4才から高齢までと様々です。発生部位は口唇部と耳介部にかなり好発する印象があります。)

○病理組織学的特徴
 組織球系細胞の特徴を有する単一の円形細胞のシート状増殖からなります。
 腫瘍の形状の特徴として、頂上部が大きく基部が狭いという逆台形や楔形のいわゆる“トップヘヴィー”な輪郭を呈します。これは後述する反応性組織球症との重要な鑑別点の一つになります。
 腫瘍の退縮はリンパ球介在性であり、退縮期には基部から腫瘍全体へとリンパ球の浸潤が広がります。またそれに伴い、反応性の組織球の浸潤や多発性の壊死巣も見られるようになります。
 後期にはリンパ球の浸潤像などで腫瘤が埋め尽くされ、組織球腫細胞が真皮浅層に僅かに残るのみとなり得ます。

②反応性組織球症(皮膚組織球症、全身性組織球症)

○由来
 反応性組織球症の由来は活性間質樹状細胞とされています。ランゲルハンス細胞と異なり間質に存在する樹状細胞であり、免疫表現型的にはE-カドヘリンの発現の有無によって鑑別されます。

(しかしながらE-カドヘリンの染色は事実上困難です。従いまして組織球腫との鑑別には増殖細胞の分布や上皮内増殖(組織球腫)の有無などにより鑑別することが多いのが実情です。)

○臨床的特徴
・皮膚組織球症
 良性の挙動を取る組織球の集合体であり、皮膚や皮下組織に限局します。多発性のこともあります。
 若齢犬に発生する傾向がありますが、ある研究で2~11歳の範囲で発生があると報告されています。好発犬種は特定されていません。
 頭部、耳介、四肢、陰嚢が一般的に報告されている病変部位であり、鼻平面や鼻粘膜にも発生します。
 免疫抑制療法にしばしば反応し、自然退縮の報告もあります。

・全身性組織球症
 主に発生する部位は皮膚や皮下組織ですが、リンパ節、骨髄、脾臓、肝臓、肺、眼瞼や強膜など他の器官にも発生します。
 発症年齢は3~9歳であり、好発犬種として現在のところバーニーズ・マウンテンドッグ、ロットワイラー、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、アイリッシュ・ウルフハウンドが挙げられています。
 病変は増大と退縮を繰り返しますが、一般的に自然寛解は起こらないとされています。臨床経過はしばしば長期化しますが、この疾患により死の転帰を辿ることは稀のようです。
 臨床徴候は発生する部位によりますが、元気消失や食欲不振、体重減少、結膜炎、呼吸困難は一般的に生じるようです。

○病理組織学的特徴
 皮膚組織球症も全身性組織球症も、細胞形態学的には良性組織球の浸潤という点で一致しています。
 いずれも皮膚病変の組織像は同一です。真皮中層から皮下表層においての浸潤が顕著であり、その病変の輪郭はいわゆる“ボトムヘヴィー”と表現され、皮膚組織球腫の“トップヘヴィー”な増殖との重要な鑑別点の一つになります。
 組織球は多中心性、小結節性、血管中心性に浸潤し、しばしば血管への侵入も認められます。それに伴う血管障害により、虚血性の組織壊死が生じる場合もあります。
 リンパ球や好中球の浸潤も様々な程度で認められ、リンパ球が浸潤細胞の50%に及ぶ場合もあります。


③組織球肉腫

○由来
 組織球肉腫の由来は間質樹状細胞とされています(血球貪食性組織球肉腫を除く)。反応性組織球症の由来細胞である活性間質樹状細胞とはCD4やThy-1の発現の有無により区別されます(現実問題としてこれらの染色は一般の施設ではできません)。


○臨床的特徴
 悪性に分類される限局性またはび慢性の組織球の腫瘍性増殖です。
 発生年齢は2~13歳であり、様々な品種で発生が報告されていますが、代表的なものにはバーニーズ・マウンテンドッグ、ロットワイラー、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバーが挙げられます。
 限局性組織球肉腫は一般的に皮下組織(特に四肢。その場合は関節周囲の発生もあります)、脾臓、舌、肺、脳幹、鼻腔、椎骨および硬膜外腔とされています。限局的な浸潤性増殖を示し、後期には局所リンパ節転移や遠隔転移を起こします。原発腫瘍の早期広範囲切除はより良好な転帰を示すとされています。
 び慢性組織球肉腫は過去に「悪性組織球症」と報告された疾患と同一のものです。広範囲な転移を伴う体内臓器の悪性腫瘍として発生します。時に皮膚や皮下組織にも病変は形成されます。一般的に体内に広範囲に病変が広がった状態で発見されるため外科的手術が適用外であり、長期生存に有用な化学療法も確立されていないため予後は悪いとされています。

○病理組織学的特徴
 組織球由来の腫瘍細胞の境界不明瞭な局所浸潤性の増殖からなります。
 腫瘍細胞はび慢性、もしくは多発性の融合結節を形成しながら増殖します。
 円形や紡錘形の細胞形態を呈し、しばしば軟部組織肉腫や他の円形細胞腫瘍と類似します。
 空胞化した細胞質を有する腫瘍細胞や多核の腫瘍巨細胞が認められることもあります。
 多発性の壊死は一般的に見られ、しばしば壊死巣に対し腫瘍細胞が柵状に配列する所見が認められます。
 リンパ球の浸潤が様々な程度で認められます。


パソラボより
上記の疾患の中にはそのサブタイプとされる疾患(例:ランゲルハンス細胞組織球症など)もありますが、今回は解説を省略させて頂きました。

組織球増殖性疾患は免疫染色により鑑別するということも書かれていますが、免疫染色で用いる抗体で市販されているものは一部であり、他は海外の一部の先生によるオリジナルです。また凍結切片(ホルマリン固定ではない)を用いるものが多く、弊社も含めてコマーシャルベースの会社では対応できないのが通常です。従いまして、現状ではこれらの知識は学問上の話であり、通常の検査においてあまり現実的な話とは言えません。

皮膚組織球症と全身性組織球症は皮膚病変のみを観察して鑑別することは、多くの場合困難です。また、いずれにも分類し難い疾患というものも時に経験し、まだ未知な部分が多くの疾患群です。

2019.07.10

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