診療Column

"ハチ"の一刺し ~ 蜂毒と犬

だいぶ暖かい日が増えてまいりました。天気のいい日には愛犬とちょっと外出という機会もずいぶんと増えてくるのではないでしょうか。わんちゃんにとっては公園や草地で自然と戯れるまたとない季節ですが、それは同時に動物たちに病害性を及ぼす昆虫類にとっても同じように、その活動が活発になってくる時期でもあります。

動物病院で治療対象となるようなノミマダニの活動も然りで、例年5〜6月以降は犬猫ともにかなり多く発見されるようになってまいります。我が千葉県では「G.W.にちょっとマザー牧場に遊びに行ってきたよ。」なんていうワンちゃんたちには、ありがたくないお土産がついてくることも多いものです。

この時期はによる吸血も増えてフィラリア予防が始まったり、ノミマダニなどの吸血昆虫による病害も生じやすくなりますから、動物病院でこうした予防の案内を受けることも多いのではないでしょうか。
季節柄、ノミ・ダニ予防をしましょう、という類の話題を持ち出す誘惑に駆られますが、それはまたの機会にいたします。。。
前置きがだいぶ長くなってしまいました。今回はテーマは刺されると痛い蜂とその毒にまつわるお話です。

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都市化や住居の気密化、高層化に伴って毒を持つ昆虫などの生き物が私たちの日常に入り込むことはずいぶんと少なくなってまいりました。ところが、人間やワンコの生活圏のちょっと外側に踏み出せば「蜂」「毛虫」「ムカデ」をはじめ、動物や人間に危害を与える可能性がある生き物はまだまだ多く潜んでいます。

ところで、「生物毒」という言葉を耳にされたことがあるでしょうか?読んで字のごとくですが「生物のつくりだす毒」とは防御や捕食のために進化させてきた、種の存続のために必須の化学物質のことです。
その生物毒のひとつ、蛇、サソリ、フグ毒など多岐にわたる動物毒(zootoxins)は、多くの植物やキノコなどがつくりだす植物毒(phytotoxin)ボツリヌス菌毒素など細菌やカビの作り出す微生物毒(bacteriotoxin)と並んで自然界がつくりだす「3種の毒」のひとつです。

やや横道に逸れますが冒頭のノミ・ダニ等の吸血昆虫も血が固まらないようにする「毒」を使って血液を寸借して、その毒による「痒み」というお土産を残していきますから、広い意味ではこういった生物毒を持っているともいえるかもしれません。

都市部でも人間や動物に危害を生じる動物毒のうち「昆虫の毒」植物毒と並んでよく遭遇するものです。当院周辺の生活圏でを持つ昆虫はおもに毛虫ムカデ類などですが、このうち最も多く遭遇するのが「」による犬への被害です。

下の顕微鏡写真は散歩中に突然、”ギャイン!!!”と叫んでそのまま足を着かなくなってしまったワンちゃんの肉球に刺さっていた「何か」を取り出したものです。

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この「エイリアンの鎧」みたいなものは、ミツバチの「針」とその根元の構造と思われます。写真では右の鋭利な「針」とその根元の構造をかたちづくる、毒液を容れる毒嚢(どくのう)らしき構造が見えますが、写真では毒嚢は既に空のようではっきり確認ができません。

ところで、蜂には動物や人間を刺すハチとそうでない蜂がいるのはご存知でしょうか?「刺す蜂」というのはミツバチアシナガバチスズメバチなどの細腰亜目に分類される蜂だけだそうです。

そもそも、蜂が持つ「針」は産卵管が変化したものといわれています。つまり「刺さない蜂」は蜂のより原始的な姿であり、その針は産卵管として使われ動物を刺すことはありません。
刺される側からみるとケシカランことですが、生命を育むための装置が進化とともに次第に防御の武器に、さらにスズメバチ至ってはその破壊力はまさに兵器級の域に達していますから生物進化のダイナミズムには驚きを禁じ得ません。

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ミツバチは針の構造上、いったん刺してしまうと、針が抜けるときにはなんと「内臓ごとちぎれて」しまいます。つまり、ミツバチにとっては人間や犬を刺すということは、即死ぬことを意味するため、かなり追い詰められた状況でしか攻撃しません。つまり使ったら自らも死ぬという最終兵器による抑止力です。

こうして見ると先ほどの写真ではミツバチのお腹がちぎれているようにも見え、何やらかわいそうな気持ちになりますが、こうして針という「蜂に刺されたという証拠」を残していきますので、ワンコに何が起きたのかを予想することができます。写真の針は肉球の中央部に刺さっていましたから、おそらくワンコにいきなり踏んづけられて、身動きが取れなくなったミツバチは生命の危機を感じたのでしょう。。。。

下記リンクの動画で毒嚢の驚くべき機能を知ることができます。ご覧になってみてください。
ー> ミツバチの針と毒嚢の動き(動画)

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当然ですが「刺す蜂」は毒を持っています。蜂に刺されると激しい痛みを起こして、刺された場所が熱を帯びて腫れ上がります。こういった体の反応は短時間のうちに生じる激しい「アレルギー反応」とそれに続く患部の「組織破壊」の結果であると考えると分かりやすいと思います。

蜂が持つ昆虫毒の特徴は多種類のアミン類低分子ペプチド類、たんぱく分解酵素類など、まるでたくさんの化学物質をごちゃ混ぜにした「毒のミックスジュース」のような液体です。

アミン類にはヒスタミンセロトニンドーパミンアドレナリンノルアドレナリンアセチルコリンなど「刺される側の動物の体の調節機能」をつかさどる生理活性物質そのものが多数含まれており、激しいアレルギー炎症痛みを引き起こしたり、神経筋肉心拍血圧など体の重要な調節機能に悪影響してさまざまな有害な反応を引き起こします。

また、これらに追い打ちをかけるように、組織を分解する酵素などの多種類のタンパクペプチドが周囲の組織赤血球などの破壊を引き起し、医学的な意味でよくもここまでという情け容赦のないダメージを与えます。さらに、オオスズメバチに至っては神経麻痺させるような神経毒まで入っているという徹底ぶりです。

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では、蜂に刺されてしまったらご自宅での対処はどうすればよいのでしょうか?

できる限り早く毒嚢が付着している針を取り去らなければなりませんが、無理に取ろうとすると逆に毒嚢に満たされている毒液を体内に押し込んでしまうため注意が必要です。その後に患部を絞って冷たい流水で洗い流し、冷やすことで症状を軽くすることができるかもしれません。

当然のことながら、強い痛みを伴っているため自宅での処置は危険を伴ったり、難しいことも多いものです。また、強いアレルギー反応に対してはなすすべがありませんから、あまり無理せずに動物病院に来院することを優先させていただいた方がよろしいでしょう。

動物病院での治療はまず、残存している「針」があれば可能な限り安全に取り除き、患部を洗浄して冷やすなどの処置を手順通り進めます。治療の基本は毒によって急速に引き起こされるアレルギー反応をはじめとするさまざまな有害反応をできるだけ抑え込むことです。こうしたさまざまな対症療法はきるだけ早期に行う必要があります。

副腎皮質ステロイドホルモン製剤抗ヒスタミン薬鎮痛薬などの薬物を使用して毒物そのものやアレルギー反応による「脹れ」や「痛み」などをできるだけ軽減することが重要な治療です。症状が強い場合や、非常に強いアレルギー反応アナフィラキシーショックにまで波及するような場合には血液循環血圧調節などの体の調節機能どが失われ、命に関わるようなショック状態を起こすことがあり得るため、その兆候を注意深く捉える必要があります。

幸いなことに、小型犬でもミツバチ一匹程度の毒量では命に関わるような症状を示すことはあまりありませんが、過去にも蜂に刺されている場合には強いアレルギー反応の可能性があるため要注意です。また、複数箇所を刺された場合や、スズメバチなど大型の蜂はもちろん中型のアシナガバチなどによるものでも体が小さなワンちゃんでは特に注意が必要です。

お散歩の楽しい季節ではありますが、お花畑や小さい花がたくさんさいている草むらではワンちゃんの足元でミツバチが蜜を吸っていますから、充分にご注意を!

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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

"おやつ"に注意。食道異物・閉塞

まずはじめに。。。

わんちゃん、ねこちゃんと生活する上で、異物誤飲誤食というのは飼い主さんが最も注意されているであろうことのひとつですが、それでも多くの方が、一度や二度は”ヒヤリ”としたご経験をお持ちのことと思います。異物の誤飲にまつわる問題は特に救急医療の現場でその発生が多くみられるものです。
何かの拍子に飲みこんでしまう「おもちゃ」、日常生活に溢れる「あらゆるモノ」が引き起こす緊急事態は、一体どんな仕組みで起こるのか?なかなか実感がわきにくいかもしれません。その問題の多くは誤飲された異物胃内異物となり、その異物または一部がさらに小腸を通過する際に閉塞を生じて、様々な時間経過を経て急性発症するものです。
発症までの時間経過としては誤飲から数日以内のことが多いようですが数ヶ月、場合によっては何年も前に飲み込んだ胃の異物が原因になることもあります。

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腸閉塞はその診断治療緊急性はもちろん高く、異物誤飲による消化管閉塞での発生件数では群を抜いていますが、同じかそれ以上に緊急性のある消化管閉塞が他にも存在します。そのひとつが「食道内の異物」による急性の食道閉塞です。

食道異物とはよく見られる胃腸異物と比較すると、どのような特徴と注意点があるのでしょうか?またそれが引き起こす食道閉塞をどのように診断して、いかに治療していくか?

今回のテーマは普段はあまり目立たない消化器である食道の緊急事態に関して、食道閉塞のさまざまな実例を順を追ってご説明したいとおもいます。。。

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食道閉塞の原因となる異物は、本来は充分に消化が可能な家庭内の食品、食材や残飯であったり、犬用ガムやジャーキーなどの市販の「おやつ」など、食べものによって生じることが多いのが特徴です。これは腸閉塞胃内異物で多くみられる、身の回りの生活雑貨やゴミのような類の異物などという特徴とはやや異なる特徴です。理由としておやつなどを取られまいとして慌てて飲みこんだりするなどがきっかけになることが多いことが背景があると考えられます。

食道閉塞ではその「原因」と「発見」「症状」がほぼ同時に連続的に起こることが多く、飼い主さんの目の前で起こりやすいため、その緊急性を理解しやすい救急疾患です。
異物を飲みこんでからの発症が予想できない腸閉塞とは異なり、食道閉塞の場合には直後、だいたい数秒から数分以内で、流涎(ヨダレ)や苦悶を伴う嘔気がみられます。重度なものでは気道圧迫による呼吸困難を起こすこともあり、中には生命の危機につながる問題を引き起こしかねないものもあります。

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食道内異物はつまった場所とその大きさ、異物の食道内での移動しやすさによって処置内容が変わります。異物閉塞が起こる部位は大きく分けて、に近い上流の頚部食道(胸腔外)と胃に近い下流の胸部食道(胸腔内)に分かれます。胸部食道での閉塞は胃の入り口、噴門部の手前に最もつまりやすく、心臓の上の心基底部(しんきていぶ)手前の食道閉塞がそれに続きます。

下図は食道の大凡の位置関係と、食道閉塞を起こしやすい場所を示しました。左が頭方向、喉から胸に至り胃の入り口までの食道レントゲン写真上に合わせてみました。食べ物は左から右に走るオレンジ色の太い線の食道を通ります。3か所の黄色星印が異物閉塞を起こしやすい場所です。
異物が詰まりやすい場所は食道が構造的にわずかに狭くなっている部位のやや手前に一致しています。

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食道ではどのような異物であれ、できるだけ速やかに除去する必要がありますが、目立った症状がみられる頚部食道と比べると胸部食道は症状がむしろ弱いことも多く、食道閉塞が見逃されやすいこともあるため注意が必要です。

食道異物による内側からの圧迫に弱くその修復能力も高くありません。食道の損傷は食道狭窄(きょうさく)や食道拡張逆流性食道炎、麻痺、嚥下困難など機能的ものも含めて深刻な後遺症を残す可能性があります。
特に胸部食道では発見が遅れたために、食道穿孔(食道に穴が開いてしまうこと)が起きた場合には心臓などの重要臓器を容れている胸の中で激しい縦隔洞炎を生じ、その治療と合併症には死と隣り合わせのリスクを背う可能性があります。

治療異物消化可能なもので、食道内を移動できるのであれば、内視鏡(左下写真)を用いて速やかに胃内に落とすことが基本的な対処法です。頚部食道の上流にある異物や「胃で消化できないもの」、胸部食道に損傷を与える恐れのあるものであれば、直接食道を切開して摘出したり、内視鏡下で様々な異物摘出鉗子(右下写真)などを用いてそのまま口から取り出することもあります。

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に落とした食道の異物はそれが胃で消化されるものであれば経過観察をしますが、そのまま胃内に留まったり、後に腸閉塞の危険を起こす恐れがある場合には、胃切開を行って摘出することもあります。

飲みこんだ異物が大きい場合には、直ちに上流の頸部食道でつまってしまうことがあります。こういった場合には激しい苦悶をともなう嘔気呼吸困難などで緊急化していますから、直ちに食道切開を行って摘出する必要があるかもしれません。

つまり食道内異物はそのすべてが緊急性の高い患者さんであって1日たりとも様子見ができない、時として数分を争う救急疾患であるというのが胃腸などの消化管内異物とは異なる点です。

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【ケース1】 胸部食道、胃の噴門部手前の異物 【リンゴ】

”食卓の上の切った「リンゴ」を丸呑みして、気持ち悪そうにじっとしている”、という訴えで来院した小型犬のケースです。診察台の上では何回かの嘔気が見られましたが、吐しゃ物は出ずに確かに気持ち悪そうしています。

こういった場合、まず、レントゲン検査を行って異物の見当をつけます。下の胸部レントゲン写真で黄色い矢印に挟まれた部分が少し白っぽく見えるのがお分かりでしょうか?実は画像診断ではこういった特徴ですぐに胸部食道異物を疑うことができます。

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下の写真が食道バリウム造影検査を行って確定診断を行った写真です。同じ部位に造影剤によって明らかになった形のはっきりしない異物造影されています。
リンゴ程度のカタマリがいかにレントゲン写真に映り難いのかがお分かりになりますでしょうか?

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下の写真が当日、緊急の内視鏡検査を行った胸部食道の異物です。異物の入り口の噴門部を越えることができず、噴門部の手前で引っかかっています。
”リンゴを飲み込んだ”、という飼い主さんの情報から、この塊が消化可能なものという判断して、内視鏡胃内異物を落として終了いたしました。

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【ケース2】 胸部食道、胃の噴門部手前の異物 【牛皮ガム】

”飼い主さんに取り上げられそうになった「牛皮ガム」を丸呑みしてしまった”、という訴えで来院した小型犬です。気持ち悪そうにしていて、吐いているが吐しゃ物が出ないということでした。診察室ではやはり時折震えて、吐くようなしぐさをしていますが何も出ません。

下写真は胸部レントゲン検査の画像です。【ケース1】と同様に黄色の矢印の間にわずかに白いエリアが見られます。

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確定診断のための造影レントゲン写真は下のようになりました。バリウムの侵入が少なくやや見にくいですが、四辺形らしい形のはっきりしない食道内異物が確認できます。

【ケース1】の異物よりも造影剤が入らないため見えにくくなっていますが、これは異物食道粘膜と密着しているということを意味します。その意味は内視鏡検査の際に明らかになります。

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次の写真が当日、緊急で行った内視鏡検査の様子です。唾液分泌物を吸い込んで膨張した「牛皮ガム」噴門部手前の胸部食道の出口で食道閉塞を起こしておりました。この部位は【ケース1】と同様に胸部食道で最も閉塞を起こしやすい場所です。

消化可能異物ですから、内視鏡によって胃内へ落とすことを試みましたが、異物は角張って食道粘膜に食い込んでおり、さらに唾液等でベタベタになった牛皮ガムが食道粘膜と密着してに落とすことはおろか動かすことさえできませんでした。最終的に周囲に潤滑剤を注入し、異物粘膜から浮かせてようやく胃内へ落とすことができました。

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ところで、上の写真のように、このように大きな牛皮ガムでもレントゲン写真にはっきりと写らないということがお分かりになりますでしょうか?

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【ケース3】 頚部食道咽頭部から食道に達している異物 【犬用ジャーキー】

”「ジャーキー」を慌てて食べた後、何かを吐こうとして止まらない”、という訴えの小型犬です。診察室ではかなり嘔気が強く、盛んに何かを吐き出そうというしぐさが見られました。腹部、胸部レントゲン写真を撮影しましたが、特に異常は見つかりませんでした。

”ジャーキーを食べた直後”ということと、診察室での様子からやはり食道の異物が疑い、頸部レントゲン検査に加えて、確定診断のためにバリウムによる食道造影を実施したのが下写真です
頸部レントゲンで、「異物が存在する」はずの黄色の丸で囲んだエリアには異常は認められません。

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ここでバリウム造影検査を行ったものが下写真です。上の写真黄色のサークル内でほぼ見えない異物造影剤で浮かび上がっているのがお分かりだと思います。異物咽頭のすぐ下から食道に入って数センチ以内の場所に存在しているようです。

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当日、緊急で実施した内視鏡検査が左下写真です。下の方に見える管状のものは全身麻酔時に人工呼吸装置とつながってい呼吸管理用の気管チューブです。チューブの入っている穴が気管の入り口、その上、9時から3時方向に見えるものが食道内異物、ジャーキーの塊のようです。

見つかった異物食道上流で口に近かったため、そのままに落とさず分割して摘出いたしました。異物の一部の写真が右下です。唾液をまみれて表面は柔らかくなっておりますが、芯が硬く、引っかかりやすい形状をしており、食道入り口に「フック」のように一部が引っかかって、その奥数センチにまで達していました。

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ところでこのジャーキーですが、ここまで大きな異物がレントゲン写真には写らないのです。

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【ケース4】 頚部食道、咽頭部から食道に達している異物 【おやつ用の牛骨】

”牛骨のおやつを食べてから様子が変です。”、という中型犬が来院いたしました。診察室内では嘔気を繰り返してとても苦しそうです。また、頸部触診を嫌がり、おとなしく診察することができません。
飼い主さんの訴えから、やはり上部消化管異物、おそらく骨だろうと考えて胸部腹部そして頚部レントゲン写真を撮影いたしました。

頚部レントゲン写真には、わんちゃんの骨格と違う「骨のレントゲン像」が見えます。(下写真の黄色矢印)、レントゲン写真にて異物の確認ができましたので造影検査は行わず、当日に内視鏡により摘出いたしました。

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下写真のような、かじられて両端がギザギザとなった「おやつの牛骨」食道のすぐまさに入り口の粘膜に左右に突っ張るように引っかかっておりました。左下写真、青矢印の先が摘出中の「おやつ」です。周りの粘膜がかなり腫れており、気道の一部を閉塞しています。
口からの距離も近く、鋭利な異物食道から胃に落とすわけにはいきませんのでからの摘出となりました。右下の写真が摘出された牛骨(あばらの骨)のおやつです。このように骨のような硬い異物になるとレントゲンに写りやすくなってきます。

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【ケース5】 胸部食道、心基底部(心臓の上)手前の異物 【デンタルボーン】

”デンタルボーンを飲みこんで苦しそうにしている。”、という小型犬です。診察室では元気に歩き回るものの、時折、嘔気で何かを出そうとしていますが出ません。このわんちゃんは日頃から歯の手入れのために「デンタルボーン」を常食にしているようです。
飼い主さんからの申告により、食道内異物はほぼ確実ですのでレントゲン撮影胸部腹部で行いました。

下の写真が胸部レントゲン写真です。黄色い矢印に挟まれた「白く細長い異物が見えると思いますこの場所は胸部食道心基底部(心臓の上)に近い部分で、食道閉塞を起こしやすい場所です。写真ではまた。食道閉塞に伴って飲み込んだ空気によって食道拡張がみられています。(右の赤い矢印の間)

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ふつう、食道レントゲン写真に写らないのですが、このわんちゃん、かなり苦しかったらしく大量の空気を飲んでおり、食道に空気が入っています。このため、飲みこんだ空気「造影剤」となって、異物「空気造影」されており、幸いにもレントゲン写真異物の存在が明らかになりました。

食道の状況を見るためにバリウム造影を行ったのが右下の写真です。造影剤異物の周囲を速やかに通り抜けており、異物は食道に密着している状態ではない様子ですが、どうも両端で食道に引っかかっているような感じではないでしょうか。右下画像が内視鏡画像です。この異物消化可能ですので、当日に胃内へ落として無事に終了いたしました。

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ところで、上の5例のリンゴ、牛皮ガム、ジャーキー、牛骨、デンタルボーンなどの見た目に明らかな異物のうち、牛骨以外の異物が意外にレントゲン写真に写りにくいということがお分かりになりますでしょうか?(5例目のデンタルボーンはたまたま空気で造影されていたもので、本来は見えにくい異物です。)

これは、食道内異物 だけでなく、での消化管内異物診断を行う上でとても重要な点です。レントゲン写真に写らない「見えない異物」による消化管閉塞をどう診断するか?これは我々獣医師にとっても、常に直面する悩み深い問題なのです。

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まとめです。。。

下の写真をご覧になってみてください。この写真は食道の下流域、胸部食道からの入り口である噴門部(中央部のすぼまっているところ)を見ている内視鏡の画像です。
実はこの写真は胸部食道に詰まった異物を摘出した後のものです。異物は「牛皮のガム」でした。この写真は閉塞が起きてから、半日程度経過したところで内視鏡検査を行ったものです。

この画像は食道が圧迫に対していかに弱い臓器なのかを示す画像としてご覧ください。

下の写真で黄色矢印の先がへこんで周囲の粘膜出血しています、中央部は「牛皮の尖った部分」に圧迫されて潰瘍を作っており、食道穿孔の危険性がありました。また、緑矢印の先に広い範囲で赤黒く粘膜面の変色が見られます、こちらも圧迫によって粘膜面うっ血が生じており、食道粘膜にダメージを起こしているのが分かります。

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実はこのわんちゃんの飼い主さんは異物誤飲には気づいておらず、来院の理由は”嘔吐して食欲がない”というものでした。もし、当日に病院に来院できなければ、もしくは診断できずに様子を見てしまえば、取り返しのつかない問題を生じていたでしょう。診察室でも嘔気が見られませんでした。

冒頭で書いた通りですが、胸部食道穿孔(せんこう)が起こると周囲の縦隔洞を巻き込む激しい炎症を起こします。治療には開胸手術を行い、最終的には食道を修復しなければなりません。そういった手術の難易度とリスクは格段に高く、死亡率の高い胃腸管穿孔をも上回るものとなります。

目の前でワンちゃんが喜んで食べている「おやつ」によって、わずか数日でそこまでの問題になるなどという危険性を想像することは普通はできないでしょう。
食道内異物は、もしも飼い主さんが異常に気付かず様子を見てしまったり、初診で診断できなければ、治療の可能性がそこで断たれてしまう可能性があります。つまり、診察室内で躊躇なく内視鏡検査をするかどうかという選択枝まで到達しなければならないことを意味しますが、これは結構大変なことなのです。

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どうしたら、食道内異物による緊急事態を防ぐことができるでしょうか?
この問題はトイ種などの小型犬に頻発いたします。そもそも小型犬ではこういった、原因となりやすいおやつ類を与えないというのが一番安全なことです。やむを得ず与える場合には小さく切って与えたり、その素材をよく選ぶといった配慮が必要と思います。

ある種の「おやつ」や「ガム」が、なぜ、食道異物として多くみられるのか?その素材には下に列挙したような特徴や共通点があるはずです。常食とされている方はこれらの点にくれぐれもご注意なさって下さい。

〇唾液など水分を吸収して「膨張」して、流れにくくなり食道を閉塞しやすい
〇同様に「表面がベタベタ」になって付着しやすくなり、食道内での移動を妨げる
〇素材が角張っていたり突起物や付属物がある等、食道内での移動を妨げる
〇骨そのもののように、食道を損傷したり、鋭利で引っかかりやすい
〇慌てて丸飲みしやすい大きさ、形状や極端に嗜好性を誘引する

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最後に。。。以下の二枚の写真をご覧になってみてください。
この2枚の写真は胸部食道のほぼ同じ場所を撮影したものです。左写真が正常な食道、右が食道損傷から生じた食道狭窄による重度慢性食道炎内視鏡検査のものです。とても同じ場所とは思えないこの2枚写真が食道に起きてしまった変化を物語っています。
緑矢印は左写真の正常と、右写真の狭窄して狭くなってしまった食道内腔を示しています。食事を飲み込むことはもちろん流動食でさえ、少しづつしかこの穴を通ることはできないのです。右写真のわんちゃんの食道はもう治ることはありません。

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食道内異物による食道閉塞は、もし、一命をとりとめてもこういった重大な後遺症を引きおこす可能性があります。飼い主さんの皆様、わんちゃんのおやつには充分にご注意なさって下さい。

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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

毛穴に巣食う見えないダニ~毛包虫

今回のテーマは「皮膚に巣食う犬毛包虫症(犬ニキビダニ症)」のおはなしです。このダニの寄生は動物病院が扱う皮膚科領域の診療を行う上で、必ず頭の隅に置いておかなければならない原因のひとつです。特に治療が思うようにいかなかったり、何度も再発する皮膚疾患の原因に深くかかわるもので、わんちゃんや飼い主さんだけではなく、私たち獣医師にとっても悩ましい「感染症」です。
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毛包虫(Demodex spp.ニキビダニデモデックスアカラスなど様々な呼び名を持つ、私たち人間を含む哺乳類皮膚常在しているダニの一種です。マダニなどの目に見えるダニと違いその大きさは体長0.3mm前後と非常に小さいため、直接目で見ることはできません。
さらに皮膚毛包内に生息しているため、皮膚組織ごと採取して顕微鏡で詳細に観察しなくては発見することができません。下の写真はそのようにして採取された毛包虫の1例です。

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よく見ると、下の3枚の写真のように毛包虫(ニキビダニ)にはその成長のステージ、左からそれぞれ虫卵、幼虫、成虫を観察することができます。たくさんの成虫が見つかったり、虫卵や若い個体が多い場合には毛包虫が盛んに増殖しているということを意味します。

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毛包虫(以下、ニキビダニとします。)はその名の通り、普段は毛穴の毛包の中で大人しく生活しており、その存在を感じることはありません。何らかの原因で宿主免疫力が低下してくると増殖を始め、皮膚に炎症やブツブツした発疹をおこします。こうして発生する皮膚疾患ニキビダニ症(毛包虫症;demodicosisと呼びます。ちなみに人間には人間の、犬には犬のニキビダニが寄生するため、種を越えて犬から人間やその他の動物にうつることはありません。
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人間のニキビダニは俗に「顔ダニ」とも呼ばれ、もしかしたら、それ用の洗浄剤などを使われたことのある方もいらっしゃるかもしれません。老若男女ほぼすべての人間に寄生しており、特に「鼻を中心とするTゾーン」に千葉県船橋市の人口の倍弱、数十~百万の寄生があるいわれていますので驚きです。
人のニキビダニ皮脂をエサとするため、通常は顔の皮脂量を調節し肌の調子を整えるのにも一役買っています。しかし、何らかの原因で皮脂の過剰分泌により増殖しすぎると、その多量の排せつ物が毛穴に詰まり、ニキビを悪化させる場合があります。ニキビダニという名称の由来はこういった人における特徴によるものです。

犬のニキビダニも人の状況と同じようにほとんどの個体に寄生しておりますが、通常はその存在が表に出ることはありません。何らかの原因でニキビダニを封じ込めている免疫機能に異常が生じた場合、過度に増殖して皮膚のあらゆる部位に多様な皮膚病を引き起こし、それが時に命にかかわるほど重篤なものであることさえあります。
次の写真はニキビダニ感染で見られた数年にわたる慢性再発性皮膚病の例です。

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同様に下の3枚はニキビダニ症の犬の皮膚病変の例を示す写真です。

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ニキビダニはどこから感染するのでしょうか?まだ不明な点も多いですが、犬のニキビダニは、生後まもなく授乳期に母犬から子犬へと伝搬されます。このためほぼ全ての犬に常在しますが、犬同士での感染は極めて低いと考えられています。

また、ニキビダニはみんなが持っているはずなのに、皮膚症状が出る場合とそうでない場合があるのはなぜなのでしょうか?前述のように、ニキビダニによる皮膚病とは、寄生しているニキビダニが過剰に増殖した結果として引き起こされるものです。

その原因はさまざまですが、若齢犬と成犬ではかなり違いがあります。

まず前者は、生後18ヶ月未満の犬で発症した場合をいいます。そのほとんどがまだ免疫機能が未成熟なために起こり、成長とともに軽快することも多いです。症状も比較的軽く、四肢や背中などの局所に小さな脱毛落屑(フケ)発疹がみられます。症状の改善がみられない場合には、駆虫薬や塗り薬、殺菌効果のあるシャンプーにより治療を行います。時に全身性の毛包虫症に移行することがあり、非常に治療の難しい状態に陥ることもあります。

後者は老齢犬で多くみられることが多く、全身的な皮膚病が重症化することも少なくありません。四肢体幹部発疹が多発し、強い毛包炎から血液の混じった「牡蠣の殻のようなカサブタ」を生じ、痒みや痛みを訴えることもあります。そしてその約半数が、何らかの基礎疾患を持っています。
腫瘍、クッシング症候群甲状腺機能低下症のような内分泌疾患、その他さまざまな慢性消耗性疾患や、免疫抑制作用を持つ薬剤長期投与もまた、その発症の要因として挙げられます。
成犬のニキビダニ症は治療に時間がかかるため、駆虫薬の長期投与が必要になる場合も多く、さらに二次感染として細菌真菌(いわゆるカビ)の感染を伴うこともしばしばですから、その治療も同時に行わなくてはいけません。

ニキビダニは肉眼では発見できないため、きちんとした検査をしなければ他の皮膚病と区別がつきにくい病気です。方法はいくつかありますが、よく行われる「掻爬検査」は、皮膚の表面を鋭利なもので削り、取れたものを顕微鏡で観察します。ほかにも、病変のある部分の毛を抜き、毛の根元にダニが付着ていないかを観察する「抜毛検査」もあります。ニキビダニはおもに毛包の中に存在するため、皮膚表面だけの検査ではなかなか発見することはできません。

下の写真は皮膚掻爬検査により、虫卵、幼虫、成虫のすべての発育ステージのニキビダニが発見された顕微鏡像の例です。ちょっと気持ち悪いかもしれませんが、おびただしい数のダニ虫体がみられるのがお分かりになると思います。こういった激しいニキビダニの増殖は時に破壊的で難治性の皮膚病変をつくり出します。

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犬ニキビダニ症アトピー性皮膚炎食物アレルギー細菌性皮膚炎(膿皮症)と併発することも多く、皮膚病が非常に複雑化することもあります。これらの皮膚病がなかなか良くならない場合は、ニキビダニ症の関連も疑って検査をおこなう必要があるでしょう。
治療しているのになかなか治らない、再発を繰り返す膚病にお困りで、長期に薬を投薬し続けているなどの条件にあてはまる場合には、それはニキビダニ症によるものかもしれません。
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文責:あいむ動物病院西船橋 獣医師 宮田知花

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